Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器6 消化管 消化管のスクリーニングとその有用性

(S342)

消化管のスクリーニングと超音波診断装置Aplio iシリーズの新しい映像化技術

Ultrasound examination of gastrointestinal tract diseases and new imaging technologies of Aplio i-series

嶺 喜隆

Yoshitaka MINE

キヤノンメディカルシステムズ株式会社超音波開発部

Ultrasound Systems Development Dep., Canon Medical Systems

キーワード :

消化管のスクリーニングにおいては,腹腔内全体を観察し,見落としなく病変を拾い上げることが求められる.消化管は体表近くの浅部より深部まで位置し,対象は,粗大病変の発見から消化管壁の層構造の観察まで,とても幅広い.消化管内のガスによる音響陰影,多重,サイドローブにより画質劣化が問題になる.超音波診断装置Aplio iシリーズでは,消化管の超音波画質の改善のために,3つの新しい映像化技術が開発されている.
1. intelligent Dynamic Micro Slice(iDMS)プローブ
腹部食道から胃全体,直腸,大腸,粗大な病変の観察には,コンベックスプローブが適している.しかし,浅部の分解能やコントラストに限界がある.浅部の消化管をより詳細に拡大して観察をする場合は,高周波リニアプローブが適している.しかし,深部感度に限界がある.
断層像の画質改善のためにマトリックスプローブであるintelligent Dynamic Micro Slice(iDMS)プローブを開発した.iDMSプローブは,従来の2本分の帯域をカバーする超広帯域特性を持つ.超広帯域特性は,単結晶の最適化設計に加えて,新レンズ材,新整合方式等,プローブに求められる全ての音響技術を新たに開発することにより実現された.コンベックス型のiDMSプローブは,浅部の消化管も高画質に観察ができる.高周波リニア型のiDMSプローブは,より深部まで詳細な消化管の性状を観察することができ,検査の効率の向上が期待される.
2.iBeam Forming
消化管内のガスによる画質劣化の主な発生原因の一つは,走査線上に形成される超音波ビームが無視出来ない幅を持つことに由来する.もともと超音波ビームは,ビームの中心である走査線から離れたサイドローブ領域でもエコーを検出してしまう.サイドローブが体内のガスや骨等の高エコー源に触れると,そのエコーを走査線上の信号として映像化してしまい,霞みのかかったような画像になってしまう.iBeam Formingは,超音波スキャン面内のビームの広がりを極力抑え,ビームの実質的な幅を浅い所から深所まで均一に細くする技術である.iBeam formingのために新たに開発した超音波パルス発生器は,正負対称性を格段に高めるなど送信する基本波の波形形成の精度を高め,高純度にTHI成分を抽出することを可能にした.このため従来のTHIに比較して,コントラスト分解能が改善し,アーティファクトの少ない消化管のTHI画像を実現している.空間コンパウンド機能や画像処理機能で,さらに管腔構造や壁の層構造を明瞭にして観察しやすい画像に調整することができる.
3. iBeam Slicing
iDMS プローブは,スライスの厚み方向にも振動子が分割されており,それぞれ独立な信号線が接続されている.iBeam Slicingは,iDMS プローブのスライス方向の素子を制御して電子フォーカスを行う技術である.従来はスライス面内のビーム形成はレンズによる一点固定フォーカスであった.そのため,焦点付近以外では,本来映像化すべきでない領域のエコーを拾ってきてしまうため,アーティファクトの増大や画像の鮮明さをそこなう原因となっている.iBeam Slicingにより,プローブ直下から薄く均一なビーム幅の断層像を生成することができ,コントラストが良くアーティファクトの少ない,鮮明な画像が得られる.iDMSプローブとiBeam Slicingにより,浅部から深部まで一本のプローブによる検査範囲が拡大し,消化管スクリーニングへの貢献が期待される.