Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器6 消化管 消化管のスクリーニングとその有用性

(S340)

超音波消化管スクリーニングの現況

Current Status of the Sonographic Screening of GI Tract

長谷川 雄一, 浅野 幸宏

Yuichi HASEGAWA, Yukihiro ASANO

成田赤十字病院検査部生理検査課

Department of Clinical Laboratory, Narita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
 超音波検査は非侵襲的なだけでなく,その簡便性と普及度から第一選択となるべき形態学的検査法であり,また高い空間的・時間的分解能を有する優れた検査法であることは言うまでもない.消化管を対象とすることに先人達の多くは否定的な意見が多かったが,機器の改良は著しく,今では本学会においても消化管スクリーニングとその有用性を語るセッションが組まれるまでとなっている.
【対象と方法】
 消化管症状を目的としない一般患者(検診を含む)を対象とし,消化管についてはスクリーニングの位置づけで超音波検査を実施した2016年4月~2017年10月の17837例を対象とした. 患者に対しては全例において前処置あるいは飲水を行わず,まず上部消化管として胃~十二指腸を,続いて下部とする小腸および大腸,最後に虫垂の順で走査を行った.全例ともに仰臥位を基本体位とし適宜変換した.使用装置は東芝メディカルシステムズ社製Aplio(i800,500,400,XG,MX),Xario である.消化管スクリーニングについては,ルーチン観察対象臓器(肝,胆,膵,腎,脾,腹部大動脈)の走査後,消化管を系統的走査に基づきコンベックス型探触子で一通りの走査を行った後,有所見例についてはリニア型探触子で詳細観察を追加した.
【結果と考察】
 腹部食道から胃前庭部,さらに十二指腸までは比較的容易に走査が可能である.同部において悪性所見を含む有所見が示唆される場合は積極的に飲水による詳細評価を追加した.その結果,23例の疾患検出に至った.
小腸すなわち空腸,回腸に関しては真の意味での系統的走査は困難である.しかし回腸末端部が走査可能である故,その病変が小腸病変であるか否かの判断は可能である.その結果,進行癌を含む4例が,スクリーニング観察で病変の指摘が可能であった.
 回盲部以降の走査はガス像を追跡しながら連続する管腔臓器を観察していく,いわゆる系統的走査の所以となるべき部位であり上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸,直腸の観察を連続的に行う.その結果,同部においては35例の疾患検出に至った.
 最後に虫垂までをスクリーニング的に観察するべきか疑問を持たれる方もいるかもしれないが,無症状である本検討においても偶発的であるか否かは別問題として3例の疾患を検出した.スクリーニング検査の定義を鑑みれば,消化管を対象臓器とすることに疑問の余地はなく,むしろ対象から外すこと,入っていないことに疑問を持たざるを得ない状況である.一方,消化管を超音波で観察することにおいて正常例の場合は基本的に前壁のみが対象となり,早期癌の存在診断や深達度診断には,必然的に一定の限界があることを理解しておく必要がある.
【結語】
 周知の事実であるが,超音波検査は消化管スクリーニングとして十分な結果を得られる一手法である.但し,超音波検査全てに共通する術者依存性を,より顕著とする領域であることを十分理解しておく必要がある.