英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器3 肝臓 治療 安全かつ確実なRFA治療を目指した超音波技術の工夫
(S330)
肝癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA)におけるFusion marker機能の臨床応用
Clinical application of Fusion marker function in radio frequency ablation therapy for liver cancer
安福 智子, 光本 保英, 水野 雅之, 島 俊英
Tomoko YASUHUKU, Yasuhide MITSUMOTO, Masayuki MIZUNO, Toshihide SHIMA
大阪府済生会吹田病院消化器内科
Department of Gastroenterology and Hepatology, Saiseikai Suita Hospital
キーワード :
【はじめに】
Bモードで描出困難な肝癌に対するRFAはReal-time Virtual Sonographyや造影超音波を併用して行われている.しかし,このような肝癌をCT/MRIのリファレンス画像とBモードの2画面表示だけでは解剖学的な位置関係から推定することはできても客観的に同定することはできない.リファレンス画像併用下に造影超音波を行う場合もプローブの回転や走査などで,腫瘍の存在断面からずれると,肝癌を描出できずに早期濃染像や後血管相の欠損像を描出することができなくなる.肝癌を描出するためにはプローブの空間的位置情報をいかに再現するかが重要となる.
【目的】
Fusion marker機能(TOSHIBA:Marker points, GE:GPS marker, HITACHI:ターゲットマーカー)とはプローブに装着した位置センサを利用して,プローブの方向や走査部位を3次元的にリアルタイムに計算し画像上にマーキングしたポイントを常にトラッキングし表示できる機能である. ソナゾイド造影エコー時に,この機能を用いることによって,Bモードで描出困難な肝癌の同定に有用となるのか,さらには肝癌局所療法への応用が可能か検討した.
【方法・結果】
ファントムを用いて目的病変近傍に1点あるいは2点のGPS marker(GE)をセットし,ファントム接触面と探触子との角度を変えた場合や探触子を回転させた場合にMarkerがどのように変化し,どうすれば目的病変を同定しやすくなるのかを検討した.目的病変を同定するには,探触子の位置・角度・回転すべてを一致させることが必要でMarkerが1点では困難であり,Markerを目的病変近傍に2点セットし,2点ともドット表示させると探触子と体表接触面との角度,探触子の回転角度が再現できるのが分かった.
次に,Bモードで同定できないS5 12mmの古典的肝癌に対して,リファレンス画像上で認識できる肝癌の両側に2点のMarkerをセットした.1点は腫瘍近傍,2点目は横隔膜におき,ソナゾイド造影エコーを施行し,明瞭に早期濃染像を描出できた.造影エコー画面上で同定しやすい解剖学的構造にセットすることで肝臓の呼吸性変動も再現できる(Fusion markers two point method)ことがわかった.
経皮的穿刺療法の際,手前側に門脈が位置する早期濃染を呈する S8 14mmの肝癌に対して,腹側にまず,RFA針を穿刺し,その後,背側位置に穿刺し治療を行った.このような場合,RFA凝固域のマージンが確保されているか判断するのが困難であるが,Fusion markers two point methodでプローブの空間的位置情報を再現した上で,腹側・背側にMarkerをおくことでマージン確保が容易となった(Fusion markers margin method).
【結語】
EOB MRIが施行可能となり小さな肝癌が発見されることも多くなったが,全ての肝癌が超音波で明瞭に描出できるわけではない.肝癌局所治療の最も重要な点は治療目標となる肝癌の同定である.そのためには目的となる腫瘍を明瞭にかつ再現性よく描出する必要がある.特に探触子と体表接触面との角度,探触子の回転角度を再現するのは術者の技術に頼るしかなかったが,Fusion markers two point methodを用いることで可能となった.また,空間的位置情報を再現した上(Fusion markers two point method)で,Markerをマージンを確保したい位置におくことによって,視覚的にマージン確保することが可能となった.Fusion marker機能は肝癌局所療法において様々な臨床応用が可能となった.