中村 進一郎, 竹内 康人, 能祖 一裕, 大西 秀樹, 森井 和彦, 和田 望, 安中 幸, 白羽 英則, 高木 章乃夫, 岡田 裕之

Shinichiro NAKAMURA, Yasuto TAKEUCHI, Kazuhiro NOUSO, Hideki ONISHI, Kazuhiko MORII, Nozomu WADA, Yuki YASUNAKA, Hidenori SHIRAHA, Akinobu TAKAKI, Hiroyuki OKADA

¹姫路赤十字病院肝臓内科, ²岡山大学病院消化器内科, ³岡山市民病院消化器内科

¹Department of Hepatology, Japanese Red Cross Society Himeji Hospital, ²Department of Gastroenterology and Hepatology, Okayama University Hospital, ³Department of Gastroenterology and Hepatology, Okayama City Hospital

キーワード :

【肝腫瘤に対する超音波ガイド下穿刺】
　我々は肝腫瘍に対して経皮的ラジオ波焼灼療法（RFA）を行う際に（1）マイクロコンベックスプローブを用いて，（2）専用の角度可変の穿刺ガイドを使用して刺入ラインを決定し，（3）最終的には free-hand で腫瘍を穿刺することを基本としている．
　マイクロコンベックスプローブを使用する理由は，（1）高齢者に限らず肋間の幅が比較的狭いため，腫瘍の正確な描出が困難な場合があること，（2）肝内にはGlisson鞘と肝静脈が複雑に交差しており，それらを避けた穿刺経路を設定する必要があること，（3）通常のコンベックスプローブではプローブの大きさ自体が穿刺や治療中の観察の妨げになる場合があることの3点があげられる．
　穿刺ラインの設定には専用の角度可変の穿刺ガイドを使用してGlisson鞘と干渉しないルートを優先している．また，腫瘍が肝表面に近接していたり，表面に隆起している場合は，肝表面と平行に穿刺できるルートを設定している．
【Free-hand 法の併用】
　上記いずれの場合もRFAの電極針を刺入する際は，穿刺の前半1/3は穿刺ガイドを利用して針を進め，そこから先は穿刺ガイドから針を外して free-hand 法にて標的に向かってゆっくり近づいてゆく方法を用いている．この方法の利点は針のたわみで穿刺ガイドのルート上から針がそれた場合にも先端をしっかり確認し，軌道を修正しながら針を進めることができることだが，欠点は腫瘍と，針先および針の軸を free-hand下に同一平面上にそろえることが出来るようにプローブを操作するのが難しい点で，技術の習熟に時間がかかることである．
【穿刺用ファントムの開発と穿刺トレーニング】
　そこで我々はfree-hand で穿刺するトレーニングを繰り返し低コストで簡便に行う事を目的に，肝臓の穿刺専用のファントムを開発した．このファントムには肝臓に見立てたたわみやすい材質の中に4個の模擬腫瘤を埋め込んでおり，さらに模擬的な肋骨を表面近くに配置している．このファントムを用いて，エコーガイド下にfree-hand で針を刺入し，ゆっくり針を進めて埋め込まれた腫瘤中心部を正確に穿刺する手技を繰り返しトレーニングする事が出来る．（図参照）
　今回は実際の症例を交えてfree-hand法を部分的に使用することの利点と，新開発のファントムの穿刺の画像も併せて供覧する．