Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器3 肝臓 治療 安全かつ確実なRFA治療を目指した超音波技術の工夫

(S329)

マルチポーラRFAと新たな3つの工夫がもたらす治療成績の向上

Three feasible methods for multipolar RFA: double-barreled needle direction system, simultaneous use of two ultrasonic probes, and 3D Sim-Navigator

榊原 充, 大川 和良, 片山 和宏

Mitsuru SAKAKIBARA, Kazuyoshi OHKAWA, Kazuhiro KATAYAMA

大阪国際がんセンター肝胆膵内科

Heptobiliary and Pancreatic Oncology, Osaka International Cancer Institute

キーワード :

【目的】
マルチポーラRFAシステムによる肝癌治療が広く行われ,それに対応する様々な工夫や装置が開発されている.当院でもアプリケータ2本を同時かつ簡便に平行に穿刺可能とする平行穿刺アタッチメントや,それを応用した穿刺プローブ2本同時併用によるアプリケータ3本での穿刺凝固法(2+1法)を開発し治療に用いている.2+1法は現時点でアプリケータ3本を同一画面上に可視化できる唯一の方法である.一方,3次元で配置されるアプリケータを仮想空間上で配置シミュレーションできる3D Sim-Navigatorが臨床応用されている.今回はこれらの工夫を駆使した当院におけるマルチポーラRFAと従来のモノポーラRFAの治療成績を比較検討した.
【方法】
2011年6月から2014年2月までにモノポーラで治療した219結節をリファレンスとし,2013年7月から2017年12月までにマルチポーラで治療した肝細胞癌71結節の治療部位,結節サイズ,治療後マージン判定および局所再発率について検討し,工夫による治療効果への影響を検討した.
【成績】
治療部位についてはモノポーラ,マルチポーラともに特徴的な分布はなかったが,マルチポーラのうち3本穿刺(2+1法)を用いたものではS7とS8に偏っていた.結節サイズはモノポーラよりマルチポーラで有意にサイズが大きかった(15mm vs 17mm; p=0.0006).さらにマルチポーラの中でも2本穿刺より3本穿刺(2+1法)を用いたもので有意にサイズが大きかった(15mm vs 22mm; p<0.0001).治療後判定ではマルチポーラの方で全周1mm以上のマージンを得られた割合が高かった(60.6% vs 44.1%).さらにマルチポーラの中でも3本穿刺(2+1法)でその割合が高く(72.2% vs 56.3%),3本穿刺の中でも3D Sim-Navigatorで事前にシミュレートすると全周マージンが5mm以上になる確率が高かった(25% vs 10%).局所再発率はモノポーラで1年10.4%・2年13.8%であり,マルチポーラで1年10.4%・2年10.4%と長期成績でやや良好であった.最短マージン距離別の比較では双方ともに0mmで1年約13%,1-4mmで約7%,5mm以上で0%であった.
【結語】
マルチポーラRFAはより大型の結節に対してより多くのマージンを確保できる優れた方法である.平行穿刺アタッチメントを用いた2本穿刺は簡便でモノポーラと遜色ない穿刺治療が可能である.3本穿刺(2+1法)では治療可能部位が肝容積の大きな右葉頭側に偏るという物理的制限があるものの,シミュレーター機能の併用でよりマージン確保しやすくなっており,今後局所再発率がさらに低くなる可能がある.