利國 信行, 松江 泰弘, 尾﨑 一晶, 土島 睦, 堤 幹宏

Nobuyuki TOSHIKUNI, Yasuhiro MATSUE, Kazuaki OZAKI, Mutsumi TSUCHISHIMA, Mikihiro TSUTSUMI

金沢医科大学肝胆膵内科学

Hepatology, Kanazawa Medical University

キーワード :

【目的】
我々は従前，肝細胞癌（HCC）のラジオ波凝固療法（RFA）におけるreal-time image fusion（RTIF）法の高い効果予測能について報告してきた．今回，患者のアウトカムをRTIF法と従来法で比較し，RTIF法の有用性を考察した．
【方法】
対象は単発HCCに対するRFA後3か月以上経過観察しえた患者．US装置およびRTIFにはPreirus（日立製作所），Real-time Virtual Sonography（RVS）を使用．Reference画像にはUS，CT，またはMRIの3D volume dataを使用．RFAはCool-tip RFA system（Covidien）を用いて施行．効果予測にはRVSのマーキング機能を活用した．すなわち，球マーカーをreference画像の腫瘍の輪郭におくとreal-time US画像にも球マーカーが同期して描出される．治療直後はmicrobubbleによって腫瘍の認識が困難となるが，球マーカーによって腫瘍の位置が把握でき，microbubbleと球マーカーの位置関係から完全凝固の有無が予測可能となる．効果判定は造影CTまたはMRIによって行った．評価項目は，短期的アウトカム（1回目の治療における完全凝固の予測的中率，総穿刺回数，総治療回数），および長期的アウトカム（局所再発率）．
【結果】
RTIF法は28例，従来法は19例．年齢，性，腫瘍径（19 mm vs. 19 mm），腫瘍部位，発生様式（新規/局所再発），造影パターン（多血/乏血），背景肝予備能，CEUSガイド下穿刺の有無，穿刺針露出長，人工胸水・腹水の有無，TACE併用の有無，すべての項目で有意差なし．RTIFに要する時間は約10分．（1）短期的アウトカム：1回目の治療における完全凝固の予測的中率はRTIF法 89％（25/28），従来法 58％（11/19）（P = 0.018）と有意差あり．RTIF法において予測が的中しなかった3例はいずれもmargin不足．総穿刺回数はRTIF法 2.0 ± 0.8，従来法2.3 ± 1.5（P = 0.38）と有意差なし．一方，総治療回数はRTIF法 1.1 ± 0.3，従来法1.5 ± 0.7（P = 0.008）と有意差あり．（2）観察期間（RTIF法 平均25か月；従来法 平均40か月）における局所再発率は6か月，12か月，18か月，24か月，30か月，36か月，42か月では，RTIF法 0％，0％，5.1％，5.1％，8.9％，8.9％，8.9％，従来法 0％，0％，6.1％，6.1％，6.1％，6.1％，9.3％（Kaplan-Meier法，P = 0.98）と有意差なし．
【考察】
RTIF法は短期的なアウトカムを著しく改善させる．すなわち，RTIF法はRFAの正確性を向上させるため治療回数を有意に減少させる．マニュアル操作の煩雑性が改善されれば，RFAの標準化に大きく貢献できる技術と言える．
【結語】
HCCのRFAにおいて，RTIF法は患者の治療負担を軽減し，ひいては医療経済にも貢献しうる．