Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
パネルディスカッション 消化器2 腹部point-of-care US

(S324)

小児領域における腹部point-of-care USの現状

Pediatric abdominal point of care US

竹井 寛和

Hirokazu TAKEI

東京都立小児総合医療センター救命・集中治療部救命救急科

Division of Pediatric Emergency Medicine Department of Pediatric Emergency and Critical Care Medicine, Tokyo Metropolitan Children's Medical Center

キーワード :

北米では2009年に成人救急医に対するPoint-of-Care Ultrasound(以下POCUS)の教育ガイドラインが発表された後,2013年に小児救急フェローのための教育ガイドラインが発表され,その中で小児の救急超音波の適応やフェローシップの教育プログラムが示された.ガイドラインに記載されているように,小児患者に対する腹部のPOCUSは,他の画像検査と比べて侵襲が少なく,放射線被曝を避けるという点で有用であることは間違いない.
成人と比べて小児の腹壁は薄く,筋肉量・脂肪量が少ないため,充実臓器の観察はしやすい.しかし,啼泣などによる呑気のために容易に腹部膨満となるため,観察しづらい場合には体位変換や哺乳させるなどのテクニックを必要とする.また,特に乳幼児に対する腹部超音波検査では,”いかにリラックスさせるか”が重要であり,身体診察に準じた方法で患児の緊張をときながら検査をおこなう必要がある.
救急外来を受診する小児のうち,腹痛を主訴とする患児は約5%と言われ,成人と比べて一般的に重症度は低く,腹痛の原因疾患は年齢や性別で異なる.ある研究では,救急外来を受診する2歳から12歳の小児の急性腹症の原因として,急性虫垂炎が最多であり,腹部外傷,鼠径ヘルニア嵌頓,腸重積症がそれに続いていた.その他,腹腔外の原因疾患として心筋炎,肺炎,精巣捻転症なども鑑別にあがる.病歴聴取と身体診察で想定された病態に対して,POCUSをおこなうことで診断に近づく可能性がある.
小児領域の超音波検査は,主に放射線科医,超音波検査技師や一部の専門科医師によって行われてきたが,近年は超音波検査装置の小型化,画質の向上,価格低下が進み,救急外来やベッドサイドで広く利用されるようになった.POCUSは限られた時間で有益な情報を引き出すために部位や項目を絞って行なわれる超音波であるが,小児領域での腹部POCUSについての本邦での研究はほとんどない.
今回は,海外のエビデンスと自験例を交えて,本邦における小児の腹部POCUSの有用性と限界を考察する.今後は,各疾患に対する腹部POCUSの診断精度のみにとどまらず,診療の質の向上につながるエビデンスの蓄積が必要である.