Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器5 肝臓 エラスト エラストグラフィは何を見ている?

(S302)

DAAs治療時にC型肝炎患者のShear wave elastography測定値に影響を与える因子の検討

Evaluation of the factor affecting the Shear wave elastography measurements of patients with hepatitis C at the DAAs treatment

白橋 亮作, 須田 季晋, 大川 修, 徳富 治彦, 金子 真由子, 行徳 芳則, 正岡 亮, 正岡 梨音, 玉野 正也

Ryosaku SHIRAHASHI, Toshikuni SUDA, Osamu OKAWA, Naohiko TOKUTOMI, Mayuko KANEKO, Yoshinori GYOUTOKU, Ryo MASAOKA, Rion MASAOKA, Masaya TAMANO

獨協医科大学埼玉医療センター消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Saitama Medical Center

キーワード :

【目的】
我々は第90回本学会シンポジウムにおいて,C型肝炎患者のShear wave elastography(SWE)で測定されるVs値が12週間のDirect-acting antiviral agents(DAAs)治療によって低下することを報告した.今回は,このVs値の低下に寄与する因子について検討した.
【対象】
DAAs治療を行い,治療後12週以上経過観察が可能であったC型肝炎患者149例を対象とした.男性62例,女性87例,平均年齢は66.6(27-84)歳であった.肝細胞癌の既往,脂肪肝,自己免疫性疾患,心不全を有するものは対象から除外した.治療薬の内訳は,SOF/RBV 56例,SOF/LDV 50例,OBV/PTV/r 43例であった.
【方法】
SWEの測定にはGE Healthcare社のLOGIQ E9を用いた.測定は空腹時に背臥位でBモード観察下に右肋間から行い,測定値はSWの伝搬速度(Vs m/s)で表され,得られた10回の計測値の中央値を検討に用いた.この際,測定成功率80%以下の症例と測定値のばらつきが 30%以上の症例は検討から除外した.SWEは治療開始前,治療終了時,治療終了後12週に測定した.治療開始時と治療終了後12週のVsの差(⊿Vs)を目的変数,治療開始時の年齢,性,ALT,GGT,T-Bil,Alb,WBC,Hb,Plt,PT%,AFP,M2BPGi, および治療開始時と終了後12週のALTの差(⊿ALT),AFPの差(⊿AFP),M2BPGiの差(⊿M2BPGi)を説明変数として重回帰分析を行った.
【結果】
HCV RNAの治療前の平均は5.9 LogIU/mlであり,全例がSVR12を達成し,抄録作成時において再燃例は認めていない.治療前,治療終了時,治療後12週のVs値 の平均(m/s)は1.58±0.92,1.46±0.27,1.42±0.25であり,治療前に比して治療終了時には有意に低下し(p=0.00000),さらに治療終了後から12週後ではさらに有意に低下した(p=0.00045).重回帰分析の結果,⊿Vsに寄与する因子としてはPT%(p=0.00002),⊿ALT(p=0.02620)の2項目に統計学的な有意差を認めた.
【考察】
Vsは一般的に肝の線維化の指標とされるが,治療開始から治療終了までの12週という短期間で組織学的に線維化が改善するとは考えにくい.⊿Vsに寄与する因子として⊿ALTが抽出されたことから,Vsの低下は肝の炎症改善を反映したものと推測された.一方で,⊿Vsに治療前のPT%が寄与していることからは,線維化非進展例の方がよりVsが低下しやすいことが示唆された.
【結論】
C型肝炎患者のDAAs治療の際のVsの低下には,治療によるALTの下がり幅と治療前のPT%が関与する.