石川 卓哉, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 須原 寛樹, 本多 隆, 葛谷 貞二, 石津 洋二, 山本 健太, 後藤 秀実

Takuya ISHIKAWA, Yoshiki HIROOKA, Hiroki KAWASHIMA, Eizaburo OHNO, Hiroki SUHARA, Takashi HONDA, Teiji KUZUYA, Yoji ISHIZU, Kenta YAMAMOTO, Hidemi GOTO

¹名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, ²名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

¹Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, ²Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【背景/目的】
我々は造影超音波内視鏡（CE-EUS）下でTime-intensity curve（TIC）を作成することにより，膵病変に対するCE-EUSにおける連続的および定量的評価が可能であることを報告してきた．しかし，TICを作成できる装置は限られており，手技も煩雑なため，TICによる評価は必ずしも容易ではない．今回，我々はTICに準ずるより簡便な方法として，膵充実性病変の診断における，CE-EUS画像の多相評価の有用性を検討した．
【方法】
2006年1月から2016年12月までに当院でSonazoid®を用いた造影ハーモニック法にてCE-EUSを行った症例のうち，最終診断が得られた膵充実性病変210例（年齢中央値66.5歳，男女比127：83）を対象とした．疾患の内訳は浸潤性膵管癌 （IDC） 142例，膵神経内分泌腫瘍（PNEN）31例，充実性偽乳頭状腫瘍（SPN）13例，腫瘤形成性膵炎（MFP）24例であった．腫瘍性病変186例は全例手術により病理組織学的診断を得ており，MFP24例はEUS-FNAにて悪性除外した後，1年以上の経過観察を行った．24例中20例は限局型の自己免疫性膵炎と診断された．CE-EUSではSonazoid® 0.015ml/kgをbolusで静脈内投与した後，60秒間連続して動画として記録し，造影剤投与後20，40および60秒後の各画像を後方視的に評価した．周囲の膵実質と比較した病変部の血流をhypo, hyper, isovascularの3パターンに分類し，IDCにおけるCE-EUSの診断能を検討した．またIDC 142例の切除標本をもとに，CE-EUSにおいてIDCパターンを示した症例とそうでない症例について，病理組織学的所見の違いを検討した．
【結果】
IDC群では造影剤投与後，早期に造影された後，20秒または40秒で，病変の大半がhypovascularパターンを示した（n = 118/142）． 20秒または40秒の時点でhypovascular patternを示すものをIDCパターンとすると，IDCと他の病変との鑑別における感度，特異度および正診率は，それぞれ83.1％，86.8％および84.3％となり，1相のみの評価よりも高い診断能を示した．病理組織学的分析では，IDCパターンを示した症例では有意に組織型でadenocarcinomaが多く（P ＜0.0001），高度の浸潤増殖様式（INF）（P = 0.005）および神経浸潤（ne）（P = 0.006）を認めた．
【結論】
CE-EUSにおける造影剤投与後1分間の多相評価は，TICによる評価が困難な場合にも簡便に行うことが可能であり，膵充実性病変の鑑別において有用である．浸潤性膵管癌の中でも病理組織学的所見の違いによって造影パターンが異なる可能性があり，B-mode所見と造影所見に矛盾がある場合には，非典型的な組織型の可能性があることにも留意する必要がある．