Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器3 肝臓 慢性肝疾患および門脈圧亢進症・肝血流の超音波診断

(S293)

造影超音波,肝静脈圧測定,超音波エラストグラフィを用いた門脈圧亢進症の検討

Consideration of portal hypertension using contrast ultrasound, hepatic venous pressure measurement, ultrasonic elastography

松清 靖, 松井 哲平, 荻野 悠, 和久井 紀貴, 篠原 美絵, 丸山 憲一, 工藤 岳秀, 永井 英成, 住野 泰清, 五十嵐 良典

Yasushi MATSUKIYO, Teppei MATSUI, Yu OGINO, Noritaka WAKUI, Mie SHINOHARA, Kenichi MARUYAMA, Takehide KUDO, Hidenari NAGAI, Yasukiyo SUMINO, Yoshinori IGARASHI

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査室, 3JCHO東京蒲田医療センター消化器内科

1Gastroenterology and Hepatology, TOHO UNIVERSITY OMORI HOSPITAL, 2Clinical Physiology Laboratory, TOHO UNIVERSITY OMORI HOSPITAL, 3Gastroenterology and Hepatology, TOKYO KAMAT MEDICAL CENTER

キーワード :

【背景】
正常肝における門脈は,神経液性因子等により門脈血流量や門脈血管抵抗を調整することで恒常性を保っている.しかし,肝硬変へ進行すると恒常性は破綻し,門脈圧亢進症を生じると言われ,その原因は線維化進展に伴う再生結節や類洞の毛細血管化などの影響が考えられている.また,病態の進展に伴い門脈血流入量が増加から低下へ転じ,その低下を代償するように動脈血が優位に増大することが知られている.門脈圧亢進症を生じた結果,食道・胃静脈瘤や腹水,肝性脳症,門脈圧亢進症性胃症などの肝外合併症を発症する.
門脈圧測定法は,近似値として閉塞肝静脈圧や肝静脈圧格差(HVPG)を用いることが多いが,非侵襲的な手法として肝エラストグラフィによる測定もあり,我々も既にHVPGと超音波エラストグラフィであるVirtual Touch Quantificatuon(VTQ)との相関を比較した検討を報告している.また,造影剤Sonazoid®を用いて肝血流動態と門脈圧亢進症の関連を検討し,肝病態進展に伴い肝内門脈血流が低下し,それを代償するように動脈血流が優位になることを報告している.
【目的】
門脈圧亢進症肝外合併症に対するPerfusion Parametric Image(Perfusion-PI)の有用性を明らかにする.
【方法】
右肋間走査で門脈右枝を描出し,左肘静脈から推奨量の造影剤Sonazoid®を左肘静脈からボーラス静注した.健常肝であれば,造影剤Sonazoid®は動脈に到達した後に門脈内に十分造影剤が行きわたり,最後に肝実質に灌流するが,肝病変が進展すると門脈に造影剤が到達する前から肝臓に造影剤が灌流する.この状態を動脈化と評価した.この動脈化を詳細に評価するために,Perfusion-PIおよびArterialization Ratio(AR)という手法を用い,Perfusion-PIは造影剤Sonazoid®が門脈に到達したタイミングを起点として,造影剤の到達する前と後の肝血流灌流,つまりPerfusionを評価し,門脈に到達する前に肝臓内に灌流した造影剤の領域を赤色,門脈に到達したあとの肝臓内に灌流した造影剤の領域を青色に色分けすることで動脈化を可視的に評価した.さらに全体の面積に対する赤色面積をARとして算出することで動脈化の程度を定量化した.
【結果】
慢性肝疾患の病態進展,門脈圧亢進症の増悪に関してはエラストグラフィや肝静脈圧測定から適切な情報を得られることが判明した.しかし,実臨床において詳細な門脈循環や肝実質血流における動脈・門脈血流バランスの変化,それを惹起するメカニズムなどを掌握するためにはそれだけでは不十分であり,今回の検討ではPerfusion-PIによる解析が有力なツールとなり得ることも示唆された.
【結語】
門脈圧亢進症肝外合併症の検討において,造影超音波,肝静脈圧測定,そして超音波エラストグラフィだかでなく,Perfusion-PIを用いることにより門脈循環と肝実質血流を検討することで,より詳細な肝外合併症の検討が可能となることが明らかとなった.今回,これら門脈循環の検討結果に加え,門亢症肝外合併症である門脈圧亢進症性胃症,食道胃静脈瘤,腹水,肝性脳症との関連についても合わせて報告する.