Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器3 肝臓 慢性肝疾患および門脈圧亢進症・肝血流の超音波診断

(S293)

慢性肝疾患における肝内脈管到達時間による肝病態診断

Hepatic vessels arrival time for diagnosis of chronic hepatitis

西村 貴士, 西村 純子, 柴田 陽子, 吉田 昌弘, 中野 智景, 青木 智子, 會澤 信弘, 池田 直人, 西口 修平, 飯島 尋子

Takashi NISHIMURA, Junko NISHIMURA, Yoko SHIBATA, Masahiro YOSHIDA, Chikage NAKANO, Tomoko AOKI, Nobuhiro AIZAWA, Naoto IKEDA, Shuhei NISHIGUCHI, Hiroko IIJIMA

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学肝胆膵内科

1Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Department of internal medicine, Division of hepatobiliary and pancreatic disease, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
慢性肝疾患における門脈循環について超音波造影剤を用いた肝内脈管到達時間の検討を行う.
【対象と方法】
Sonazoid0.5ml/bodyをボーラス投与(1.0mL/sec)し肝動脈(以下HA),門脈(以下PV),肝静脈(以下HV)それぞれの到達時間を測定した108人中,測定不良を除いた健常人13名,慢性肝炎62名(うち肝硬変43名)を対象とした.HA,PV,HVそれぞれの到達時間と病態,肝硬度(以下LS)・脾硬度(以下SS)・Spleen index(以下SI)との関連について検討した.
【結果】
対象者の年齢は67.5±11.1歳,性別(M/F);35/40人,背景肝(NC/B/C/B+C/NBNC);13/6/47/1/8人であった.HA/PV/HVへの到達時間は健常人17.5/23.9/34.1秒,慢性肝炎14.6/20.4/25.8秒,肝硬変13.2/19.4/24.1秒であり,肝硬変では健常人と比較して有意に早かった(P<0.05).またぞれぞれの到達時間差PV-HA/HV-HA/HV-PVは健常人6.46/16.7/10.2秒,慢性肝炎5.81/11.2/5.39秒,肝硬変6.20/10.8/4.62秒であり,PV-HAは有意差認めなかったが,慢性肝炎,肝硬変ではHA-HV/PV-HVの差が健常人より有意に短縮した(P<0.001).背景肝別,child分類別での検討では脈管到達時間に差は認められなかったが,胃食道静脈瘤の有無別では静脈瘤なし/ありそれぞれHA13.8/13.0秒,PV20.0/19.1秒,HV26.5/22.6秒,PV-HA6.20/6.05秒,HV-HA12.7/9.62秒,HV-PV6.52/4.34秒とHV-HA,HV-PVの差のみ有意に短縮した.Major shunt(胃腎シャント,脾腎シャント)の有無別ではシャントあり/なしそれぞれHA14.5/8.88秒,PV20.2/10.4秒,HV25.0/14.6秒,PV-HA5.70/1.50秒,HV-HA10.5/5.70秒,HV-PV4.82/4.20秒とmajor shuntがある場合は各脈管到達時間,到達時間差が有意に短縮した(P<0.05).到達時間とLS,SS,SIとの有意な相関関係は認めず,慢性肝炎,肝硬変の門脈血流量,門脈血流速,うっ血係数,心拍出量にも有意差は認められなかった.肝硬度と脾硬度と肝内脈管到達時間に相関は認めなかった.C型肝炎に対するDAA治療前後では到達時間,到達時間差はやや短縮する傾向を認めた.
【考察】
肝硬変では到達時間,到達時間差が健常人より有意に早く,特に到達時間差は肝内のシャント形成を表しているものと考えられた.慢性肝炎でも有意差はないものの到達時間,到達時間差は健常人より早くなる傾向であり,慢性肝炎の時期からすでに肝血流動態の変化をきたしていると考えられる.うっ係数や心拍出量とは相関を認めないことから体循環の影響は受けにくい指標であり,食道胃静脈瘤を有する例でも到達時間差が有意に短縮していることから肝硬変(門脈圧亢進症)の病態を表していると考えられた.
【結語】
肝内脈管到達時間は門脈圧亢進症の血流病態を反映しており,到達時間差は肝内シャントの発達を予測する因子であることが示唆された.