Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器1 肝臓 NASH NAFLDの診断と病期予測

(S285)

VCTEにおいて信頼性のあるデータ取得のための臨床条件の検討

Performance characteristics of vibration controlled transient elastography for diagnosis of advanced fibrosis in patients with NAFLD

廣岡 昌史, 小泉 洋平, 石原 暢, 古川 慎哉, 日浅 陽一

Masashi HIROOKA, Yohei KOIZUMI, Toru ISHIHARA, Shinya FURUKAWA, Yoichi HIASA

1愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学, 2愛媛大学大学院疫学・予防医学

1Gastroenterology and Metabology, Ehime University Graduate School of Medicine, 2Epidemiology and Preventive Medicine, Ehime University Graduate School of Medicine

キーワード :

Vibration controlled transient elastography(VCTE)はNAFLDの線維化進展症例の低侵襲的拾い上げにおいて有用とされる報告が多く見られる.一方でVCTEにおいて再現性の低い信頼性のないデータが得られる生体条件の因子が海外からの報告で散見される.これらの報告における母集団の多くはBMI 30以上の高度肥満例で日本人のNAFLD症例の母集団と異なっている.
【目的】
健診脂肪肝症例においてVCTEにより肝硬度値(LSM)が適切に取得できない因子を検討する.さらに肝生検施行例において組織所見と肝硬度値が解離した症例の特徴を解析する.
【方法】
(検討1)健診症例742例(男性275例,女性467例,平均年齢 60.7歳,平均BMI 25.1 Kg/m2)にVCTEのM probeによる肝硬度測定を施行.既報に従いvalid LSM 10未満,success rate 60%未満,IQR/LSM 30%超を非信頼データとした.非信頼データに寄与する因子を回帰分析で解析した.(検討2)VCTEと肝生検を施行しVCTEにおいてvalid LSM 10未満,success rate 60%未満,IQR/LSM 30%超のデータが得られたNAFLD 96例(男性50例,女性46例,平均年齢 58.4歳,平均BMI 25.3 Kg/m2)を解析した.肝生検におけるF stage 3以上と,これに相当するLSM 7.5以上が合致しない症例を非適切症例とした.非適切症例と適切症例の間で生化学検査値,体組成計により得られる各因子(骨格筋量,体脂肪率など),real-time tissue elastography(RTE)によるLF indexを算出するための各パラメーター(SKEW,KURTなど)を群間比較した.
【成績】
(検討1)皮下脂肪厚(SCD)20mm超が非信頼データに寄与する有意な因子として唯一抽出された(オッズ比1.76(95%CI. 1.24-2.50).性,年齢,トランスアミナーゼ,血圧などの因子は有意なものとして抽出されなかった.(検討2)非適切症例において細胞内水分量(p=0.024),細胞外水分量(p=0.032),骨格筋量(p=0.025)が有意に高い結果となった.体脂肪量は有意差が見られなかった.組織所見で非適切症例のみでA2以上の炎症所見症例が見られたが統計的有意差はなかった(p=0.573).RTEにより得られた各パラメータも2群間で差はなかった.
【結論】
VCTEのM probeにおいて適切なデータを得るためには皮下脂肪の厚みが重要であり,皮下脂肪の厚い症例ではXL probeの併用が必要である.さらに水分量,骨格筋量の多い症例ではLSMの乖離に注意が必要である.