Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器4 ガイドラインの鵜呑みで本当にいいの?

(S272)

肺高血圧症のガイドラインに物申す

Is optimal management for patients with pulmonary hypertension base on the current guideline appropriate?

田中 秀和

Hidekazu TANAKA

神戸大学大学院循環器内科学分野

Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

 右室収縮能は様々な心疾患において予後規定因子であると報告されている.特に,肺高血圧症患者では,右室収縮機能の低下は,独立した予後規定因子であることが多数の研究結果から証明されている.2009年にESC/ERSから公表された肺高血圧症の診断と治療に関するガイドラインでは,肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症)のリスク評価で推奨されている心エコー図指標は,心膜液の有無と三尖弁輪部収縮期移動距離(TAPSE)が記載されていた1.しかしながら,ESC/ERSから公表されている最新のガイドラインでは,肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症)のリスク評価で推奨されている心エコー図指標は,心膜液の有無と右房面積のみであり,右室収縮能に関する指標は他のモダリティーも含めて記載がない2.心エコー図法は優れた心機能評価法であるが,右室は左室と異なり形態が複雑であるため,回転楕円体と仮定することはできず,単一断面のトレースから右室容積や右室駆出率を算出することは困難である.この右室の形態の複雑さが,心エコー図法による右室機能の定量的評価を困難にしている.TAPSEが優れた右室収縮能指標であるか否かも議論の余地があるが,右室収縮能を評価せずに,肺高血圧症のリスク評価を行うのは,良い方法とは思えない.
 本セッションでは心エコー図法による,右室収縮能指標の利点と問題点を整理し,肺高血圧症患者に対する臨床応用を概説する.
1Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension. Eur Heart J. 2009;30:2493-2537.
22015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension. Eur Heart J. 2016:37:67119.