Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎5 光と超音波の融合による定量診断・機能イメージング技術

(S226)

光超音波計測の定量化と脳機能イメージングへの展開

Quantification of Photoacoustic Imaging and its Application to Brain Functional Imaging

椎名 毅

Tsuyoshi SHIINA

京都大学医学研究科人間健康科学系専攻

Human Health Sciences, Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

光超音波イメージングは,光音響効果を用いて,非造影で深部組織の吸光特性の分布を画像化する技術として研究開発がなされ,マウスなどの小動物を対象とした光超音波顕微鏡によるサブミリ以下の微小血管の構造や,酸素飽和度などの機能イメージを得ることが可能となってきている.また,腫瘍に特徴的な血管分布や,低酸素状態を可視化することで乳がんや前立腺がんなど診断を目指した臨床用装置の開発も進められている.これらの光超音波画像は,照射レーザー光の波長をパラメータとする組織の光吸収係数の分布をもとにしている. 即ち,ヘモグロビンを対象とした場合,波長800nmの光では,血液量を反映することから血管分布が画像化される.また,複数の波長に対する光吸収係数を用いることで,酸素飽和度の算出が可能になる.
 がん診断以外にも,光超音波による生体計測への応用例の1つとして,脳機能評価がある.すなわち神経細胞の活性化による活性領域への血流像と酸素需要の増加を可視化することで脳機能のモニターが可能なことから,マウスなどの小動物の脳を対象とした研究が注目されている.
 この際,測定点での光吸収係数を如何に正確に推定できるかで,最終的に血液量や酸素飽和度などの画像の定量性が決まる.光吸収係数を正確に得るのは,測定点における照射光量の定量化,および超音波の減衰の補正による初期音圧の定量化が不可欠となる.前者の光量の評価には,光源から測定点までの光の散乱や吸収特性が必要であり,後者は組織の超音波物性が必要となる.
 顕微鏡で表面から極めて浅い部位を測定する際には,測定点の光吸収係数を定量的に得ることは比較的容易であるが,臨床応用のように,深部を計測する場合は,生体組織の光学や超音波物性を事前に正確に得ることは困難なため,平均的な値で代用するか,一定の仮定のもとで推定することになる.
 ここでは,光超音波計測の臨床応用を進める場合の定量化の課題と,その対応策についての考察,また特に定量性が重要視される例として脳機能イメージングへの応用を取り上げて概説する.