Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎4 血流速度ベクトルを推定する技術でカラードプラを越える

(S221)

マルチモダリティでの血流解析技術の成熟期における循環器診療のありかた

Clinical Practice in Cardiovascular Medicine in an Era of Advanced and Matured Blood Flow Imaging with Multiple Modalities

板谷 慶一

Keiichi ITATANI

京都府立医科大学心臓血管外科心臓血管血流解析学講座

Department of Cardiovascular Surgery, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

近年血流を可視化する画像モダリティが急速に台頭し,これらは従来アセスメントが困難であった血行動態を包括的に後解析で評価できるようになり,循環器診断のあり方に変容を迎えつつある.そんな中で心臓超音波血流解析はデータが手軽に入手できることや,重症例においても何度でも評価できることなどの利便性から実践的なモダリティとしての立ち位置を確立する可能性をはらんでいる.一方で,データ・サイエンス全盛の今日にあって,超音波血流解析は計算と計測の狭間にあるデータ同化の側面を有しており,特殊な位置づけであることに留意が必要である.
 従来血流可視化の最も標準的なものは位相コントラスト法に基づく心臓MRIを用いた方法であった.近年では多断層積層によるシネ位相コントラスト法(4D flow MRI)もコンピュータ技術の向上とともに画像解析技術が向上し,商業的にも入手可能な方法となってきており,旧来困難であった拍動追跡も容易に行われるようになりつつある.この方法は右心室や上行大動脈での血流評価をも可能にするため極めて診断的な意義が大きい.また数値流体力学を用いたコンピュータシミュレーションでは従来手術術式の一般論などを議論するのに使われてきたが,今日ではより低侵襲なphysiologyの診断ツールとしての意義を確立しつつある一方で,どこまで計測データを計算に入れ込むかが技術的な議論の争点となっている.そのような中,心臓超音波血流解析は方法は多種多様であるが,実データの中に何らかの物理方程式に基づく演算を施すことで,血行動態に関する実践的な値を得ることを期待される側面が大きく,技術開発者と使い手の総合力が要求される技術ともいえる.
 本講では近年話題となっている代表的な血流解析技術について簡単にoverviewを行ったうえで,血行動態が極めて難しい症例に対して超音波血流解析がどのような威力を有するかということを,例えば心室間相互作用を有する右心系疾患を主体とした成人先天性心疾患例の左心機能へのアセスメントなどを例にとって議論する.