Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎3 未開拓領域

(S216)

心療内科患者に対する超音波検査

Ultrasound Examination for Psychosomatic Patients

川嶌 隆

Yutaka KAWASHIMA

川嶌内科小児科クリニック

Kawashima Clinic

キーワード :

【目的】
 2015年から標榜開始した心療内科を訪れる患者に実施している超音波検査の新たな切り口について検討を加え,その将来性についての私見を述べる.
【対象と方法】
 過去約3年間,心療内科を訪れた患者に対し実施した腹部超音波検査(使用装置:アロカ社製SSD4000/探触子3.75MHz)の内容を振り返り,各病状や尿検査等の変化と対比し,超音波検査の新たな視点を検討した.
【結果と考察】
 心療内科を訪れる患者の多くは,弱く・敏感なお腹(膵臓)を持つ超音波像(膵体部が薄く,膵負荷を示唆する胆嚢腫大像や強い消化不良像を認める等)や食べ過ぎを示唆する所見(膵腫大像や膵臓部分の圧痛や成人例では脂肪肝・尿路結石等の存在等)を示し,これらを裏付ける生化学検査結果も確認され,小児例では成長障害を疑うケースも散見された.
 抗鬱剤等の投薬継続のままのケースでは,膵臓の厚みは減少せず均等な厚みを示し,消化不良像も軽微で,薬による自覚症状安定化がもたらされていることを示唆する所見と判断された.一方,病状が安定しないケースでは,膵臓は不均等な厚みを示し,更に膵負荷を示唆する所見等を認める場合が多かった.
 一方,薬に殆ど頼ることなく比較的短期間に抑鬱状態等からの脱却が図れたケースでは,膵臓の厚みの軽減が確認される場合が多く,膵臓は均等な厚みを示し,データ上(P/S比:尿中膵アミラーゼ/唾液腺アミラーゼ比・P/C比:尿中膵アミラーゼ/クレアチン比等)の改善も確認され,一時的な病状悪化も乗り切れることが可能となっていた.また,小児においてはバランス良い成長にもつながるケースも見られた.
【結論】
 心療内科を訪れる患者に対し超音波検査等による初期対応を積極的に実施することが,薬に頼らぬ問題解決への糸口につながる可能性が確認された.
 超音波検査内容等については今後,多くの症例での検討が肝要と判断された.