Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断4 プライマリ・ケアにおける超音波検査実践活用術~腎・泌尿器、女性生殖器編~

(S192)

プライマリ・ケアに必要な腎臓・尿管の超音波所見

Ultrasonographic finding of upper urinary tract for primary care

皆川 倫範

Tomonori MINAGAWA

信州大学医学部泌尿器科学教室

Urology, Shinshu University School of Medicine

キーワード :

泌尿器科領域で超音波検査は必須の検査である.特に,プライマリ・ケアで必要である.詳細な画像診断では,CTやMRIの重要性が高く,超音波検査のみで診療を行うことは不可能である.しかし,プライマリ・ケアでは違う.プライマリ・ケアでは,どの患者が次のステップとしての検査や治療を受けるべきかスクリーニングする必要がある.そのスクリーニングで,超音波検査は大きな役割をもつ.今回,腎・尿管の超音波検査がプライマリ・ケアで果たす役割について総論的な内容の講演をさせて頂く.講演の内容は,①腎尿管の解剖,②超音波検査による描出法,③腎・尿管の病態,④腎・尿管の疾患を疑う症状と鑑別疾患の四点に分けて概説を行う.第一に,腎尿管の解剖を解説する.腎臓は脊椎を挟むようにある臓器で,右腎は肝臓により尾側へ偏位しているので,左よりも尾側にある.正面からみると,長軸がハの字になっている.後腹膜の臓器であるので,前面から内側にかけて,肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,十二指腸に接している.さらに腹側には小腸と大腸がある.尿管は腸腰筋の前面を尾側に下降して,総腸骨動脈と交差してさらに骨盤底に向かう.膀胱の背側から膀胱内に開口する.そういった解剖は当然のことではあるが,まずそれらの解剖の要点を理解することにより,腎尿管の描出方法で大いに役立てることが出来る.第二として,解剖の理解したうえで,超音波検査による腎・尿管の描出法を解説する.ただし,尿管の描出に関しては,解剖を理解したうえでも通常では不可能である.水尿管になってかろうじて尿管の描出が可能である.水尿管があったとしても,その描出には解剖の理解とコツがある.本講演では,水尿管の辿り方についても解説をおこなう.そして第三として,水腎症(上部尿路閉塞)と鑑別疾患(嚢胞性疾患),尿路結石症,腫瘍性病変の内容を,腎・尿管それぞれについて解説を行う.特に,水腎症のグレード判定,鑑別疾患として嚢胞性腎疾患に触れるが,グレードの記載よりも,その判定基準である腎盂の拡張,腎杯の拡張,腎実質の菲薄化を挙げることの重要性にふれ,さらに水腎症は病態であり問題は程度と原因であることを資料提示しながら解説する.また,結石の診断では,典型像を挙げたうえで,カラードプラでのアーチファクトを逆手に取って結石の診断を行うtwinkling artifactについても触れる.結石の所見の取り方に加えて,急性期の対処法と治療体系に触れながら,経過観察や治療効果判定での要点を解説する.腫瘍に関しては,診断・記載のポイントを挙げ,次の検査であるCTやMRIにつなげる超音波検査の活用方法について触れる.そして第四として,腎・尿管疾患を疑う症状を訴える患者に対したときの診療体系を概説し,超音波検査のアプローチを解説する.本講演では,腰背部痛と血尿を主訴にする患者への診療体系を整理する.プライマリ・ケアとして,尿路疾患であるかどうかは明らかでない状態で,鑑別疾患を視野に入れながらの超音波検査のあり方を説明する.特に見逃してはならない疾患や,CT,MRIを行うべき所見を挙げる.プライマリ・ケアで超音波検査を役立てるうえで,明日からの診療に役立てる知識や診療体系を供覧する.