Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 健診・その他
健診・その他

(S694)

大動脈弁狭窄症例における収縮期加速時間に影響を及ぼす因子

Evaluation of factors related to the acceleration time of the common carotid artery in patients with aortic stenosis

川又 美咲, 竹川 英宏, 豊田 茂, 今野 佐智代, 江尻 夏樹, 高瀬 直敏, 吉原 明美, 大谷 直由, 天野 裕久, 髙田 悦雄

Misaki KAWAMATA, Hidehiro TAKEKAWA, Shigeru TOYODA, Sachiyo KONNO, Natsuki EJIRI, Noatoshi TAKASE, Akemi YOSHIHARA, Naoyuki OOTANI, Hirohisa AMANO, Etsuo TAKADA

1獨協医科大学病院超音波センター, 2獨協医科大学神経内科, 3獨協医科大学心臓・血管内科, 4那須赤十字病院超音波診断部

1Department of Neurology, Dokkyo Medical University, Tochigi, Japan, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, Tochigi, Japan, 3Department of Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, Tochigi, Japan, 4Department of Ultrasonic Diagnosis, Nasu Red Cross Hospital, Tochigi, Japan

キーワード :

【目的】
パルスドプラ法による血流速度で得られる収縮期加速時間(AcT)は,血流速度計測部位より心臓側にある狭窄病変1)2),大動脈弁狭窄症(AS)で延長する3).また総頸動脈(CCA)のAcTは性別や年齢,大動脈弁閉鎖不全症の有無,左室駆出分画(LVEF)には影響されないことが報告されている4).しかしAS患者におけるAcTに影響する要因は不明である.
【対象と方法】
重症AS 25例(年齢中央値85歳,男性9例)を対象とした.経胸壁心エコーはVivid7,Vivid E9(GEヘルスケア・ジャパン),iE33(フィリップスエレクトロニクスジャパン)で施行した.ASの診断は専門医が行い,LVEF,大動脈弁口面積(AVA),最高大動脈弁口血流速度(Vmax)および一回拍出量係数(SVI)を評価した.頸動脈エコーは経胸壁心エコー検査前後2週間以内にAplio i800またはAplio 500(東芝メディカルシステムズ)を用い,標準的評価法1)に準拠して施行した.AcTはパルスドプラ波形における初めのピークまでの時間と定義し,5心拍の平均を用いた.統計はAcTに関連する要因について重回帰分析を行い,p<0.05を有意とした.
【結果】
LVEFの中央値は63%(範囲26-85),AVAは0.65cm2(0.32-1.00),AV Vmaxは4.7 m/sec(2.6-5.9),SVIは35.1 ml/m2(16.8-61.5)であった.AcTは両側とも110 msec(右側範囲60-200,左側範囲60-220)であった.年齢および性別で補正すると,右CCAのAcTではAVA(p=0.240,r=0.650),AV Vmax(p=0.742,r=0.621),SVI(p=0.620,r=0.625)と関連がなかったが,LVEFは関連する傾向が得られ(p=0.057,r=0.695),全ての項目で補正すると,LVEFは有意に関連する要因であった(p=0.023,r=0.774).一方,左CCAではいずれの項目も有意な関連は得られなかった.
【考察と結論】
O’Boyleらは軽症および中等症のASでは両側ともCCAのAcTは40 msecと軽度延長し,重症ASでは右190msec,左150msecに延長することを報告している3).また岡村ら4)は中等症および重症ASはCCAのAcTが110msec以上であるとしている.自験例の検討では重症ASが対象であるが,AcTの中央値は両側とも110msecであり,本報告と同様であった.一方,AcTの延長にはLVEFと関連がないとされているが4),自験例では右CCAでLVEFがAcTに影響を及ぼす可能性が示唆された.左CCAではLVEFは関与していなかったが,O’Boyleら3)の報告においてもAcTは左側より右側でより延長しており,腕頭動脈から右総頸動脈が分岐する解剖学的な影響があると推察される.結論として,重症ASではLVEFにより右CCAのAcTが変化する可能性がある.
【参考文献】
1)Neurosonology 19: 40-67,2006.
2)J Med Ultrason 41: 63-67,2014.
3)AJR Am J Roentgenol 166: 97-202,1996.
4)Neurosonology 25: 81-85,2013.