Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 腎泌尿器
腎泌尿器

(S686)

7年間の経過観察後に精巣摘除術を施行した精巣成熟奇形腫の1例

A case of testicular mature teratoma undergoing orchiectomy after follow-up for 7 years

押野見 和彦, 冨士 幸蔵, 松井 祐輝, 中里 武彦, 森田 順, 七条 武志, 前田 佳子, 直江 道夫, 小川 良雄

Kazuhiko OSHINOMI, Kohzo FUJI, Yuki MATSUI, Takehiko NAKASATO, Jun MORITA, Takeshi SHICHIJYO, Yoshiko MAEDA, Michio NAOE, Yoshio OGAWA

昭和大学医学部泌尿器科学講座

Department of Urology, Showa University School of Medicine

キーワード :

症例は45歳男性.数年来の左精巣の腫大と違和感を主訴に2008年4月に当科を受診した.触診所見では,左精巣は小鶏卵大で対側精巣と比較すると腫大していたが表面は平滑で明らかな硬結はみられなかった.陰嚢超音波検査では,左精巣は5.5×3.1×3.6cmであったが,内部に境界明瞭な径3.5×2.7×3.0cmのほぼ均一な低エコー域を有する腫瘤性病変を認め,MRIでは同部位の造影効果はみられず,鑑別として単純性精巣嚢胞または類表皮嚢腫が考慮される所見であった.精巣腫瘍マーカーも正常範囲であったが,悪性腫瘍も否定しきれず,精巣摘出術も提案したが,患者と相談の結果,3~6か月毎の定期経過観察の方針となった.その後,7年間,定期的な触診,陰嚢超音波および腫瘍マーカー採血を施行していたが,所見に変化はみられなかった.定期的な経過観察を継続するなかで,不安の増大などから,2015年8月に患者本人より手術の希望があり,同年10月に左高位精巣摘除術を施行した.病理診断は,術前画像診断とは異なり,成熟奇形腫であった.術後,現在までに明らかな再発や転移は認めていない.精巣成熟奇形腫は小児例では,悪性成分を含まなければ一般的には予後良好とされ,良性として取り扱われるが,成人例では再発や転移を認める報告もあり,悪性胚細胞腫瘍に準じた取り扱いが必要である.発生時期については患者本人の申告のみであり詳細は不明であるが,当科受診前から長期間放置されていたことや初診時から7年間,所見に変化がなかったことなどから,小児期からの経過であることも考えられる.だとすれば悪性の可能性は低いかもしれないが,今後も再発や転移の可能性は否定しきれず,引き続き経過観察は要するものと思われる.精巣の嚢胞性病変については鑑別として単純性精巣嚢胞,精巣白膜嚢胞,類表皮嚢腫,嚢胞性成熟奇形腫などが挙げられる.本症例では,MRIを組み合わせても術前診断は困難であったが,精巣保存の適否や経過観察については,陰嚢超音波検査は重要な役割を果たすものと考える.