Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化器その他2

(S669)

腹部超音波検査にて鑑別可能であった若年者の急性腹症の1例

A case of the juvenile with acute abdomen diagnosed by abdominal ultrasonography

野田 晃世

Teruyo NODA

高松赤十字病院消化器科

Gastroenterology, Takamatsu Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
若年者の急性腹症は,鑑別に挙げる疾患に苦慮することがある.診断や初期対応を誤ると急激な悪化を来し重篤な状態となり得る可能性を持つため,あらゆる疾患を念頭に入れ迅速な対応が必要となる.尿膜管膿瘍は出生後に退化するはずの尿膜管の遺残に感染を起こすことで発症する.成人における尿膜管遺残症は約2%との報告があり,膿瘍形成に至る症例は多いとは言えない.そのため急性腹症の診断で鑑別疾患の上位とは言い難い.症状発生部位からは虫垂炎・憩室炎・腸炎等の頻度が高いが,非侵襲的な腹部超音波検査で前記疾患を除外でき確定診断に近づけた症例を経験したので報告する.
【症例】
16歳男性
【主訴】
右下腹部痛
【現病歴】
当院受診1週間前から臍周囲の痛みを自覚し近医にて整腸剤を処方され経過観察されていた.その後増強したため夜間診療所を受診し,右下腹部に圧痛と筋性防御を認めたため,虫垂炎を疑い当院へ紹介受診となった.
【経過】
腹部超音波検査(GE社LOGIC E9)で虫垂は腫大や炎症所見は無く描出され,虫垂炎は否定的であった.同検査で臍部皮下に袋状の液体貯留と周囲脂肪織の肥厚を認め,膿瘍腔から膀胱頂部にかけて尿膜管腔が連続して描出されたため,尿膜管膿瘍と診断した.造影CTでも臍直下部に周囲の脂肪織濃度上昇を伴った被包化された液体貯留が見られ壁が強く造影されており,尿膜管洞への膿瘍形成と裏付けられた.自然排膿後に腹痛は軽減し圧痛も消失したため,再発予防にセファロクエル(ケフラール○R)内服を開始し尿膜管膿瘍は治癒した.その後に尿膜管摘出術を施行した.
【考察】
尿膜管膿瘍は特徴的な部位に生じる疾患であるため,急性腹症において頻度の高い疾患を除外できれば診断に近づくことが可能である.侵襲が少なく被爆の無い腹部超音波検査は,頻度の高い疾患の診断に優れていることから,その除外診断にも有用であり稀な疾患の診断に有効であると考えられる.本症例は超音波検査にて臍部の膿瘍腔と膀胱頂部に続く尿膜管を連続して描出可能であったことから,稀な疾患を診断でき根治へ至ることができた.
【結語】
急性腹症を呈した若年者を腹部超音波検査にて尿膜管膿瘍と確定診断した一例を経験した.