Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
造影超音波

(S594)

造影超音波を用いた乳癌の広がり診断についての検討:造影MRIとの比較

Comparative accuracy of preoperative breast tumor size assessment on contrast: enhanced ultrasound and MRI

武輪 恵, 平井 都始子, 丸上 亜希, 丸上 永晃, 伊藤 高広, 中井 登紀子, 中村 卓, 小林 豊樹, 吉川 公彦

Megumi TAKEWA, Toshiko HIRAI, Aki MARUGAMI, Nagaaki MARUGAMI, Takahiro ITOH, Tokiko NAKAI, Takashi NAKAMURA, Toyoki KOBAYASHI, Kimihiko KICHIKAWA

1奈良県立医科大学総合画像診断センター, 2平成記念病院放射線科, 3奈良県立医科大学放射線科, 4奈良県立医科大学病理診断学講座, 5奈良県立医科大学乳腺外科

1General Diagnostic Imaging Center, Nara Medical University, 2Department of Radiology, Heisei Memorial Hospital, 3Department of Radiology, Nara Medical University, 4Department of Diagnostic Pathology, Nara Medical University, 5Department of Surgery, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
乳癌の浸潤範囲の把握,すなわち乳癌の広がり診断は,乳癌の治療方針を検討する上で,重要な項目の一つである.ソナゾイド造影超音波検査は,乳腺腫瘤の良悪性の鑑別診断に対する有用性が評価され,2012年8月に乳腺病変に対し保険適応となった.一般的に乳癌の広がり診断には造影MRIが用いられているが,MRIの撮像体位は腹臥位で,手術時の体位とは異なっている.手術時と同じ仰臥位で施行する造影超音波検査での広がり診断の有用性が期待されるところであるが,現段階では乳癌の広がり診断に関するまとまった報告はない.
【目的】
乳癌の広がり診断に対するソナゾイド造影超音波の有用性について,造影MRIと対比して検討する.
【対象と方法】
対象は,2012年9月から2015年8月にソナゾイド造影超音波と造影MRIをともに施行後に手術した乳癌症例のうち,画像と病理組織との対比が可能であった58症例.超音波使用機種は,GE社製LOGIQ E9,LOGIQ S8,LOGIC L7のいずれか,MRI使用機種は,GE社製 Signa HDxt 1.5T.それぞれ2名の超音波専門医および2名の放射線診断専門医によって,造影超音波画像と造影MRIの乳癌の長径を計測し,摘出された乳癌の病理組織の長径との相関を検討した.また,造影超音波画像と造影MRIそれぞれについて,病理組織との長径の誤差を5mm未満,5mm以上10mm未満,10mm以上の3段階に分け,両モダリティで過大評価あるいは過小評価の程度に差があるか,また,測定誤差の大きい症例についての乳癌の組織型を検討した.
【結果】
乳癌病変の長径について,造影MRIと病理組織の間には,有意な相関がみられ(r=0.509,p<.001),造影超音波画像と病理組織の間には,低い相関の傾向がみられた(r=0.294,n.s.).造影超音波画像で25例(43.1%),造影MRIで30例(51.7%)は病理組織との長径の誤差が5mm未満であった.10mm以上の誤差があった症例は,造影超音波画像で22例(37.9%),造影MRIで14例(24.1%)であり,そのうち,乳癌の長径を過大評価していたものは,造影超音波画像で3例(5.2%),造影MRIで1例(1.7%),で,いずれも乳癌の組織型は,invasive ductal carcinomaであった.過小評価していたものは,造影超音波画像で19例(32.8%)であった.そのうちの13例(22.4%)は造影MRIでも過小評価しており,組織型の内訳はinvasive ductal carcinoma12例,mucinous carcinoma1例であった.造影超音波画像でのみ過小評価していた6例の組織型の内訳は,invasive ductal carcinoma 2例,DCIS 3例,LCIS 1例であった.
【考察と結論】
造影超音波画像での乳癌の長径計測値について,病理組織の計測値との間の相関は,造影MRIよりも劣っていたものの,誤差10mm未満の症例が62.1%,そのうち誤差5mm未満とほぼ正確に計測できていた症例が43%あり,手術時と同じ体位で施行できる優位性を考慮すると,臨床的な有用性を期待できる結果と考える.しかし,過大評価した症例よりも過小評価した症例のほうが多いことは,臨床上問題であり,特にDCISやLCISでは,造影MRIに比べて,造影超音波画像が病変の長径を過小評価する傾向があり,注意が必要と考えられた.