小澤 克典, 三辻 礼美, 金沢 誠司, 宮 美智子, 杉林 里佳, 和田 誠司, 左合 治彦

Katsusuke OZAWA, Hiromi MITSUJI, Seiji KANAZAWA, Michiko MIYA, Rika SUGIBAYASHI, Seiji WADA, Haruhiko SAGO

国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター胎児診療科

Center of Maternal-Fetal, Neonatal and Reproductive Medicine, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
Tissue Dopplerは心筋の速度を計測する方法の1つである．成人や小児の心機能評価に用いられており，胎児においても研究されている．我々は双胎間輸血症候群（TTTS）の受血児の心機能をtissue Dopplerを用いて評価し，胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術（FLP）による胎児治療前後で拡張能が収縮能に遅れて改善することを報告した．本研究では，tissue Dopplerを用いてTTTSとselective IUGR（sIUGR）における胎児心機能を評価した．
【方法】
対象は2014年6月から2016年12月までに当センターで胎児治療をおこなう直前に超音波計測をしたTTTSの受血児とselective IUGR（sIUGR）のlarger twinで，sIUGR群（A群）とTTTSのQuintero stageⅠorⅡ群（B群），stageⅢorⅣ群（C群）の3群に分けて比較した．計測項目はtissue Dopplerで計測した収縮期最大心筋速度（S’），myocardial performance index（MPI’），拡張早期の最大血流速度（E）を最大心筋速度（E’）で除したE/E’とした．
【結果】
左心室（LV）MPI’はA群（n=12）0.64±0.20，B群（n=26）0.59±0.14，C群（n=27）0.68±0.16であり，B群とC群の間に有意差（p＜0.05）があった．右心室（RV）MPIはA群0.58±0.12，B群0.60±0.13，C群0.66±0.13であり，有意差がなかった．LV S’（cm/s）はA群（n=15）3.6±1.0，B群（n=39）3.6±0.6，C群（n=58）3.0±0.6であり，A群とC群，またB群とC群の間に有意差（p＜0.01）があった．RV S’（cm/s）はA群4.6±0.9，B群4.3±0.9，C群4.0±1.0であり，A群とC群の間に有意差（p＜0.05）があった．LV E/E’はA群（n=15）10.0±3.0，B群（n=39）10.5±2.9，C群（n=58）12.2±4.8，RV S’（cm/s）はA群9.3±3.1，B群9.9±2.7，C群11.1±3.8であり，各群間に有意差はなかった．
【結論】
S’は各群間の収縮能の違いを表している可能性がある．E/E’は拡張能の指標とされているが，本研究では症例ごとの数値のばらつきが大きく，各群間で有意差はなかった．MPI’は右心室において同一心拍で計測できることは利点であるが，本研究では各群間に有意差を認めなかった．