Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器1 肝臓 脂肪性肝疾患の超音波臨床 ~up to date~

(S232)

脂肪性肝疾患の診断とその問題点

Diagnosis of Fatty Liver Disease: Current Concept and Remaining Problems

橋本 悦子

Etsuko HASHIMOTO

東京女子医科大学消化器内科

Internal Medicine and Gastroenterology, Tokyo Women's Medical University

キーワード :

脂肪肝は,過剰飲酒によるアルコール性脂肪肝とそれ以外の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とに分類される.NAFLDは,病態が進行することの稀な非アルコール性脂肪肝(NAFL)と,肝硬変や肝細胞癌に進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からなる.脂肪肝の血清診断マーカーはなく,画像あるいは組織診断となる.NAFLDではALT優位のトランスアミナーゼの上昇が特徴であるが,約20%は正常値を示す.肝硬変に進行すると,ウイルス性肝硬変などの他の病因による肝硬変とほぼ同様の病態を呈する.NALFDの予後は肝線維化の重症度で規定される.線維化予測スコアリングシステムとしては,NAFLD fibrosis scoreやFIB-4 indexが有用である.FibroScanなどの画像診断による線維化判定も診断率が高い.病理学的にNAFLDは,線維化と活動性で評価される.活動性はNAFLD activity scoreとして,脂肪変性,炎症性細胞浸潤,肝細胞の風船様変性の合計で評価されていたが,脂肪変性と炎症性細胞浸潤や肝細胞の風船様変性は異なる病態を表しており,これを同一に論じることは問題で,近年では各特徴を列挙することが推奨されている.線維化は,F3;bridging fibrosis,F4;肝硬変である.
NAFLDの定義は,非アルコール性,肝組織所見あるいは画像検査で脂肪肝の診断,他の肝疾患を除外の3項目を満たすものである.非アルコール性とは,純アルコールで男性30g/日,女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるので,NAFLDの飲酒量はそれ未満となる.NAFLDのうち肝組織所見で,脂肪変性,炎症性細胞浸潤,肝細胞の風船様変性を呈するものをNASHと定義する.NASHはNAFLDの10-20%である.肝組織検査は,稀ではあるがリスクを伴う検査で,日常診療ではNAFLDとして扱われる.なお,NAFLD/NASHの定義に関しては十分なコンセンサスは得られていない.理由としては,<1>脂肪性肝障害を飲酒量で分界することに関しては,肥満で大酒家つまり両因子を合併する症例があること.<2>NAFLとNASHは,異なる疾患であるとする考えが主体であったが,NAFLからNASHへの進行例が報告され,両疾患は異なる疾患ではなく同一疾患の異なる病期をみていると考えられること.などがあげられる.脂肪性肝疾患の新たな分類が必要である.