Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
その他

(S869)

急性精巣上体炎を契機に発症した精巣壊死の1例

A case of testicular necrosis associated with acute epididymitis

押野見 和彦, 冨士 幸蔵, 今村 雄一郎, 松井 祐輝, 小川 祐, 中里 武彦, 森田 順, 直江 道夫, 小川 良雄

Kazuhiko OSHINOMI, Kohzou FUJI, Yuichiro IMAMURA, Yuki MATSUI, Yu OGAWA, Takehiko NAKASATO, Jun MORITA, Michio NAOE, Yoshio OGAWA

昭和大学医学部泌尿器科学講座

Department of Urology, Showa University School of Medicine

キーワード :

症例は35歳男性.突然の左陰嚢痛を主訴に当院救急外来を受診した.発熱や血液所見および尿所見で異常はみられず,触診で左精巣上体に一致した腫脹と圧痛を認め,超音波検査でも同部位の腫大を認めたため,急性精巣上体炎と診断し抗菌薬加療を開始した.7日間抗菌薬を投与したが,効果乏しく,左精巣上体のみならず精巣も硬く腫大し,再度施行した超音波検査は,腫大した精巣上体のみならず,精巣内部も初診時の所見と異なり,モザイク様で不均一となり,嚢胞様変化も伴った所見がみられた.精巣腫瘍も否定できず,MRIを施行したが,精巣上体炎および,精巣上体から直接炎症が波及した精巣炎もしくは精巣膿瘍が疑われた.腫瘍マーカー検査も行ったが,AFP,HCGとも基準値内であった.さらに7日間,抗菌薬を変更して投与を継続したが,抗菌薬に対する反応が不良であったことと,MRI所見から精巣膿瘍を強く疑われること,抗菌化学療法抵抗性精巣膿瘍では精巣摘除を余儀なくされている報告例が多かったことから,精巣摘除術を施行した.病理組織診断では,悪性所見はみられず,精巣上体および精巣に高度の炎症細胞の浸潤がみられ,精巣はうっ血と共に著明な出血壊死の所見がみられた.精巣壊死をきたす疾患の一つとして精巣梗塞が知られており,その原因としては,血栓や静脈炎などによる血流の直接的障害と精巣捻転,外傷,炎症などによる血管の圧迫による血管外の間接的障害に分けられるとされており,原因不明な特発性の精巣梗塞の報告もされている.自験例では,手術所見でも精巣の捻転所見はみられなかった.理学所見,画像所見,病理所見から推測すると急性精巣上体炎の進展により,二次的に静脈還流障害が起こり,精巣のうっ血,さらに出血性梗塞を引き起こし,壊死に至ったのではと推測された.急性精巣上体炎に対する抗菌薬治療効果が乏しい場合は,急激な炎症の波及に伴い,精巣壊死に陥るような梗塞も発症する可能性があることを念頭に置く必要があると考えられた.