Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
その他

(S868)

前腕に皮下腫瘤を形成したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1例

A case of diffuse large B cell lymphoma which formed simple subcutaneous nodule on the forearm

谷口 真由美1, 畠 二郎2, 竹之内 陽子1, 岩井 美喜1, 麓 由起子1, 岩崎 隆一1, 妹尾 顕祐1, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 杉原 尚3

Mayumi TANIGUCHI1, Jiro HATA2, Yoko TAKENOUCHI1, Miki IWAI1, Yukiko HUMOTO1, Ryuichi IWASAKI1, Kensuke SENOH1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Takashi SUGIHARA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学血液内科学

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Hematology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
皮膚原発の悪性リンパ腫は約85%がT細胞・NK細胞リンパ腫であり,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse large B cell lymphoma:DLBCL)は約6%と稀である.医中誌にて検索し得た範囲では,その超音波像に関する報告はない.前腕の単発性皮下腫瘤を初発症状としたDLBCLの1例を報告する.
【症例】
70歳代,女性
【主訴】
左前腕皮下腫瘤の精査
【既往歴】
B型肝炎,シェーグレン症候群
【現病歴】
20XX年6月初旬,左前腕橈側をぶつけた後,同部位に約20mm大の腫瘤を自覚.近医にて経過観察されるも腫瘤は徐々に増大.精査加療目的で当院紹介受診となった.
【来院時現症】
左前腕橈側に40×25mm大の可動性良好な皮下腫瘤を認めた.
【血液生化学所見】
明らかな異常所見は認めなかった.
【体表超音波】
左前腕橈骨近傍の皮下に33×24×14mm大の低エコー腫瘤を認め,腫瘤周囲は浮腫状であった.腫瘤は紡錘形に近い形状で境界は一部不明瞭,輪郭はやや不整,エコーレベルは非常に低く,微細な高エコーが混在.血流シグナルは豊富で比較的太い血管が走行.屈曲蛇行は少なく,P.I.は1.0.腫瘤の両端は橈骨神経と連続しているように描出され,典型的な神経鞘腫とは異なる所見であることから悪性神経鞘腫を疑い,鑑別対象として悪性リンパ腫を考えた.
【単純MRI】
左前腕部皮下軟部組織内に境界明瞭,内部均一なSTIR高信号,T1W1にて周囲筋より軽度高信号を呈する腫瘤を認め,周囲には少量のeffusionを伴っていた.血腫や血管・リンパ管奇形が考えられ,経過を加味すると血腫の可能性が高いと考えられた.
【造影MRI】
左前腕橈骨側皮下にT1W1低信号,STIR高信号の腫瘤を認め,強い造影効果を呈し,神経原性腫瘍が最も疑われた.
【PET/CT】
左前腕と左肘に腫瘤状高集積を認め,いずれも悪性腫瘍が疑われた.
【術中所見】
腫瘍は橈骨動脈に浸潤しており剥離困難であったため,腫瘍部中心を1×1.5cm程度摘出した.
【病理組織診断】
リンパ球様大型腫瘍細胞のびまん性増殖からなる病変で,これらはCD20,CD79a陽性であることから,DLBCLと診断された.
【経過】
R-THP-COP療法が2コース施行され,左前腕のFDG集積は消失.現在外来にて経過観察されているが再発は認めていない.
【考察】
神山らは皮膚の濾胞性リンパ腫の超音波像について,不整形の低エコー腫瘤で,内部エコーは不均一,後方エコーの増強を認め,腫瘤内部に流入する血流シグナルがあったとし,同じB細胞リンパ腫として本例と所見が類似していると思われる.悪性神経鞘腫は壊死を反映して内部エコーは不均一になるが,被膜を有し,輪郭平滑な類円形腫瘤とされる.形状が紡錘形に近いこと,橈骨神経と連続して描出されたことから神経原性腫瘍を疑ったが,エコーレベルが非常に低いことや明らかな被膜構造に乏しく,腫瘍周囲は浮腫状で浸潤性発育が疑われること,臨床的にも神経症状がなかったことなどを考慮すると,悪性リンパ腫をまず疑うべきであった.悪性線維性組織球腫や転移性皮膚腫瘍も鑑別に挙がるが,エコーレベルや血管構築が異なる.造影CT,PET/CTの主目的は全身検索とリンパ節病変の評価であり,造影MRIでも本疾患の質的診断は容易ではない.高分解能かつ特徴的な血管構築の情報が得られる体外式超音波の有用性が示唆された.