Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
その他

(S868)

超音波が発見の契機となった後縦隔発生の未熟奇形腫の一例

A rare case of Immature teratoma of the posterior mediastinum detected by ultrasonography

藤沢 一哉1, 松浦 幸子1, 本間 明子1, 山口 梨沙1, 志賀 淳治2, 長沼 裕子3, 石田 秀明4

Kazuya FUJISAWA1, Sachiko MATSUURA1, Akiko HONMA1, Risa YAMAGUCHI1, Junji SIGA2, Hiroko NAGANUMA3, Hideaki ISIDA4

1津田沼中央総合病院検査科, 2津田沼中央総合病院病理部, 3市立横手病院消化器科, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 2Department of Pathology, Tsudanuma Central General Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Depart of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回,我々は心エコー検査が発見の契機となった後縦隔発生の未熟奇形腫を経験したので報告する.
【症例】
90代,男性,既往歴は,平成5年に胆石症手術,平成13年に肺気腫,平成20年に冠動脈ステント挿入,平成25年にS状結腸憩室出血あり.
平成27年,3月 胸部しめつけ感あり,さらに呼吸苦も加わり.外来受診.胸部XPで異常陰影を指摘され,精査入院となった.
【採血データ】
Hb11.8g/dl,Ht33.9%で軽度の貧血とBUN23.5mg/dlで軽度に腎障害を認めた.また,BNPが176.2pg/ml,腫瘍マーカーのNSEが18.7ng/ml,Pro-GRPが108.1pg/mlと高値であった.
【胸部XP写真】
上行大動脈腫瘤疑い,または動脈の蛇行を考え,精査のため心エコーを実施した.
【心臓超音波検査】
大動脈周囲に石灰化が目立ち,軽度の大動脈弁狭窄と僧房弁逆流を認めた.著明な三尖弁逆流と右心系負荷があり,推定右室圧は90mmHgであった.右心房と下大静脈の拡大像あり.少量から中等量の心嚢液の貯留を認めたが,左室機能は保たれていた.
また,左心房後側に低輝度腫瘤を認め,左心房はこの腫瘤により圧排されていた.肺動脈の拡大もみられ,右心系負荷は腫瘤が背面から心臓を圧迫しているためと考えられた.巨大な肺がんを考えたが腫瘤の全体像が把握できないため,CT検査を施行.
【CT】
左心房や食道を圧排する縦隔腫瘍が確認され,肝にも多発転移も認められた.食道GISTや悪性神経鞘腫などが考えられる所見であった.
【食道内視鏡】
門歯より25cmの部分に白色調に変化した粘液を認め,腫瘍が食道に浸潤していると思われた.
【経過】
家族より積極的治療は望まないとの事で,疼痛コントロールのみが実施された.呼吸苦が進み,入院から約1週間後に永眠.
【病理】
病理解剖で後縦隔に右気管支を圧排する13x12x7cm大の腫瘍あり.食道に浸潤し粘膜面に径3cm大のドーム状腫瘤を形成していた.右肺下葉に突出するが,圧排性増生で肺内転移はない.割面では,境界明瞭な白色腫瘍で粘液変性と出血を認めるが壊死は目立たない.周囲リンパ節は腫大しているが明らかなリンパ節転移はなかった.
組織的に異型の乏しい重層扁平上皮,腺上皮及び異型が強く腺癌と判断される像で,異型が高度な間葉系細胞が認められ肉腫と判断した.その他軟骨様組織,血管腫様の小血管の増殖が認められた.肝臓,骨髄像に転移が認められ,肉腫様所見と癌組織成分が存在した.
以上より未熟奇形腫と最終診断された.
【まとめ】
当初,胸部XP写真で拡大した動脈と思われた像は腫瘍であった.腫瘤自体は後縦隔に存在したため全体像を捉えることは出来なかったが,本疾患を発見する契機として心エコーは有効であった.通常,縦隔腫瘍は胸腺腫や奇形腫など前縦隔に発生することが多く,後縦隔からの発生では神経原性腫瘍があり,本例のような未熟奇形腫の形態を示すものは稀と思われる.心エコー検査が周知され,縦隔疾患に遭遇する機会も増えることが予想され,これら疾患の存在を認識することが重要と思われる.