Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
健診

(S865)

看護師による心臓超音波検査への取り組み−心不全患者急増に対する対策の一環として−

A proposal of the heart sonography by the nurses ─As a practical way of prevention from the rapidly increasing heart failure─

北川 久美

Hisami KITAGAWA

やすい総合内科クリニック看護部

Nursing department, Yasui General Medicine Clinic

キーワード :

近年における日本人の高齢化に伴い,現在約100万人とされている心不全患者数が,10年後には,120万人に急増することが予測されており「心不全パンデミック」という言葉も見受けられるようになっている.この予測に対し,心不全を治療するとともに,回復した心機能をいかに継続させることへの対策が必要であると考え,いろいろな状態の心不全患者に接する機会が多い看護職による心臓超音波検査が実際にはどのように有効であるかを,症例を通じて検討したので報告する.
重要臓器における多くの疾患は重症化すると最終的には心不全という形に集約される.その一方で,心不全の診断に対して単一の検査方法は存在しない.身体所見はもとより,心電図検査,レントゲン検査,血液検査,超音波検査,カテーテル検査などの諸検査所見から本疾患が診断されるのであるが,これら諸検査はそれぞれの利点と欠点を持っており,これらをいかに有効に活用してゆくかが,重症化を防ぐポイントあると考えられる.
今回,われわれは心疾患から心不全をきたした1例,および呼吸器疾患から心不全を来した1例で,いずれも心臓超音波検査にて,IVC・E/e´の計測から治療方針を変更した症例について検討を加えたので報告する.
1,事例紹介
症例1,80歳代女性.診断名:うっ血性心不全,高血圧症.現病歴:降圧剤,利尿剤,抗凝固剤を服用していた.H27年4月に息切れ,食欲不振を主訴にて来院.心臓超音波検査を施行し治療方針を変更した.
症例2,90歳代女性.診断名:うっ血性心不全,気管支喘息,高血圧.現病歴:降圧剤利尿剤,抗凝固剤を服用していた.時々,息切れや倦怠感の訴えがあるが,その都度心不全,または喘息に起因するものかの見極めに,心臓超音波検査を施行し治療方針を変更した.
2,考察
心不全は心疾患患者にだけ特有な病状でないことは言うまでもないことであり,これからの高齢化社会においては,あらゆる疾患からの心不全を想定しておく必要があると考えられる.そのためには,心疾患の有無にかかわらず,病状安定期における諸検査の数値が重要な指標となる.一般的に,1回のみの検査からの診断は専門家でも難しいことが少なくないが,経過観察による変化の観察は格段に難易度が低くなる.また心臓全般の超音波検査や診断は非常に難しいが,今回の症例のように,IVCやE/eの計測に限定すれば,技術的にはそれほど困難なことではなく,看護師でも十分対応ができると考えられる.医師や検査技師は,疾患や検査の専門家であるが,多様かつ多数の患者に接するという点では看護師のほうがその機会は多い.現在心臓超音波検査を実践している看護師は少ないが,医師や検査技師の協力を仰ぎながら患者に接していくということが,急増しつつある心不全患者に対する有効な手段と考えられた.
おわりに
今回私たちは,看護師が心臓超音波検査を通して,医師との連携を図り,時宜を得た治療を行うことにより患者の苦痛を除くことができたことよりその有効性が確認できたので報告した.