Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
血管

(S859)

心不全を契機に超音波検査にて診断しえた腎血管性高血圧の一乳児例

Infant case of renovascular hypertension diagnosed by ultrasonography with heart failure

佐伯 茉紀1, 面家 健太郎2, 大塚 真子1, 仲村 純奈1, 山本 育美1, 青木 美由紀1, 長屋 麻紀1, 佐藤 則昭1, 豊島 由佳2, 寺澤 厚志2

Maki SAEKI1, Kentaro OMOYA2, Mako OTSUKA1, Junna NAKAMURA1, Ikumi YAMAMOTO1, Miyuki AOKI1, Maki NAGAYA1, Noriaki SATO1, Yuka TOYOSHIMA2, Atsushi TERAZAWA2

1岐阜県総合医療センター臨床検査科, 2岐阜県総合医療センター小児循環器内科

1Clinical Laboratory Department, Gifu Prefectural General Medical Center, 2Pediatric Cardiology, Gifu Prefectural General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
小児の腎血管性高血圧は比較的稀であるが,特に乳児期に発見されることは極めて稀である.小児では血圧測定をする機会が少なく,高血圧性心不全など重篤な合併症状から高血圧が発見される例もある.今回我々は,心不全を契機に超音波検査にて診断しえた早期乳児の腎血管性高血圧を経験したので報告する.
【症例】
日齢28日,男児.在胎37週6日,出生時体重2670g,Apgar8点/9点で他総合病院にて出生.出生時に施行された心臓超音波検査にて明らかな異常は認めなかった.生後28日,同院での1ヶ月健診時に体重2856g(+6.6g/day)と体重増加不良を認めた.胸部レントゲンでの心拡大,心臓超音波検査再検では左室拡大,左室収縮能の低下を認め,拡張型心筋症が疑われたため,同日当院小児循環器内科へ転院搬送となった.当院入院時,活気低下あり,皮膚は網状チアノーゼを呈しており,血圧124/86mmHgと乳児期早期として著明な高血圧を認めた.心臓超音波検査では,左室拡張末期径は26.1mm(正常の145%)と左室拡大を認め,左室駆出率は21.5%と拡張型心筋症様の左室収縮能の低下を認めた.高血圧を合併する拡張型心筋症様の心不全であり,特発性および高血圧等に起因する二次性心筋症・心不全を考慮し鑑別を行った.腹部超音波検査では右腎動脈は起始部で収縮期最大血流速度308cm/secと高度狭窄を認め,右腎門部の血流波形は狭窄後パターンを呈し,腎内血流は乏しい状態であった.左腎動脈に狭窄は認めず,腎形態は右腎の萎縮および左腎の代償性腫大を認めた.その後施行した造影CTでも同様の右腎動脈狭窄を認め,腎血管性高血圧の診断となった.また,造影CTでは右結腸動脈にも狭窄が疑われ,背景に線維筋性異型性が疑われた.腎動態シンチグラフィでは右腎はほぼ機能しておらず,右腎機能の廃絶はやむを得ないと判断,アンギオテンシン変換酵素阻害薬による薬物療法を開始した.治療により徐々に心不全は改善し,入院42日目に退院となった.
【まとめ】
今回,腹部超音波検査は乳児期早期症例の腎動脈狭窄を診断し,腎血管性高血圧による二次性心筋症・心不全の早期診断・治療介入の一助となった.また乳児期であり,造影CTの様なより侵襲度の高い検査を行う根拠を示す意味でも低侵襲性の腹部超音波検査は有用であった.