Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
血管

(S858)

頸動脈超音波検査で発見された透析患者における椎骨動静脈瘻の一例

A case of vertebral arteriovenous fistula detected by carotid artery ultrasonography in hemodyalysis patient

仁木 素子1, 土手 絹子2, 高橋 延行2, 田中 敬一朗1, 直井 康二1, 吉田 衣江2, 辻 みゆき2, 楊 培慧2, 高山 康夫2

Tomoko NIKI1, Kinuko DOTE2, Nobuyuki TAKAHASHI2, Keiichirou TANAKA1, Koji NAOI1, Kinue YOSHIDA2, Miyuki TSUJI2, Masue YOU2, Yasuo TAKAYAMA2

1関西医科大学香里病院臨床検査部, 2関西医科大学香里病院内科

1Department of Clinical Laboratory, Kansai Medical University Kori Hospital, 2Department of Medicine, Kansai Medical University Kori Hospital

キーワード :

【はじめに】
定期で行われた頸動脈超音波検査で発見された椎骨動静脈瘻の症例を経験したので報告する.
【症例】
70歳代女性.腎硬化症による末期腎不全の為2014年に透析導入となった.頸動脈超音波検査において,右椎骨動脈起始部付近の血流は順行性で,収縮期最高血流速度(peak systolic velocity: PSV)89.6cm/secと軽度上昇RI 0.47と低下を認めた.次(末梢方向)の椎間位ではモザイク血流を認めパルスドップラーで計測を試みたところ,静脈波様の定常波と動脈波様の拍動波の混在を認めた.さらに次(末梢方向)の椎間位の血流は順行性ではあるが,PSV 30cm/secと減速し,拡張末期血流は検出できない血流速パターンであった.以上より,モザイク血流は動静脈瘻によるものが疑われた.各RI値については,右内頸動脈0.72,右外頸動脈0.92,左内頸動脈0.73,左外頸動脈0.92であった.
MRAでは,右椎骨動脈は,C5/6レベルより頭側で急に細くなり,C3/4より頭側では同定できなかった.また,右椎骨動脈から右椎間孔を経由して脊柱管右の硬膜外に血流が認められたことから,椎骨動静脈瘻という診断が得られた.
【考察】
椎骨動脈の入る横突起孔のレベルは,C6が最も多く93%であり,C3は0.2%,C4は1.0%,C5は5.0%,C7は0.8%である.したがって,頸動脈超音波で起始部付近であるとした順行性血流はC6/(7)椎間位での計測であり,旋回様の軽度モザイクflowを認めたのはC5/6椎間位と考えられる.これはMRAの所見と同様で,動静脈瘻はC5/6椎間レベルであると考えられた.
先行文献で,硬膜動静脈瘻との鑑別であるが,外頸動脈のRIが0.7以下で,内頸動脈と外頸動脈のRI ratioが0.9以上の場合,硬膜動静脈瘻である特異性が高いとされている.本症例の外頸動脈のRIについては右0.92左0.92と,ともに0.7以上であった.また,内頸動脈と外頸動脈のRI ratioについては右0.78左0.79と,ともに0.9以下であった.以上より,頸動脈超音波での計測値からも,この動静脈瘻は硬膜内に起因する動静脈瘻ではないことも強く示唆された.
医中誌web検索では「椎骨動静脈瘻」は36件(2012から1984)報告されているが,超音波所見の記載されているものはなく,今回,頸動脈超音波検査によって椎骨動静脈瘻と診断されたのはまれであると思われた.
【結語】
椎骨動脈は頸部の深部で頚椎の横突起間を走行することから音響陰影のため,評価については苦慮することが多い.血流速度は第5/6椎間で測定することが一般的であるが,その前後描出できる椎間についてはできる限り広範囲に計測することが望ましいと考えられた.