Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 胎児異常③

(S855)

診断に難渋した先天性サイトメガロウイルス感染症の一例

A case of congenital cytomegalovirus infection with difficulty in diagnosis

玉田 祥子, 牧 尉太, 江口 武志, 光井 崇, 平野 友美加, 衛藤 英理子, 延本 悦子, 早田 桂, 増山 寿, 平松 祐司

Shoko TAMADA, Jota MAKI, Takeshi EGUCHI, Takashi MITSUI, Yumika HIRANO, Eriko ETO, Etsuko NOBUMOTO, Kei HAYATA, Hisashi MASUYAMA, Yuji HIRAMATSU

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室

Department of Obstetrics & Gynecology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【緒言】
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,母体の無症候性感染であっても発症することが知られている.また,ここ数年は母体の抗CMV抗体保有率が低下してきており,先天性CMV感染症のリスクが増加している.今回,我々は診断に難渋した先天性CMV感染症を経験したので報告する.
【症例】
30歳,2経妊1経産.自然妊娠にて妊娠成立し,近医にて初期より妊婦健診施行.妊娠24週ごろよりFGR傾向となり,妊娠26週時の超音波検査にて側脳室拡大を指摘された.胎児MRI施行したところ,小脳低形成・小脳虫部欠損・大槽拡大を認め,Dandy-Walker症候群もしくはvariantとの診断であり,今後の精査加療目的に妊娠30週で当院紹介となった.当院初診時,胎児推定体重934g(-3.1SD)と著明なFGRを呈し,さらに中大脳動脈血流/臍帯動脈血流の再分布,羊水過多に伴う子宮収縮も認めており,同日管理入院とした.超音波検査で頭部以外はとくに異常所見は見られなかった.原因検索のためTORCH検査を行ったが,CMV-IgM陰性,CMV-IgG陽性であり,既往感染と考えられた.その他の感染症についても妊娠中の初感染を疑わせる所見は認めず,羊水染色体検査も正常核型であった.入院中,胎児発育は認めていたが,羊水過多の進行に伴い子宮収縮抑制困難となり,妊娠34週で前期破水,完全破水となった.同日深夜に陣痛発来し,その後NRFSとなり緊急帝王切開術を行った.児は1435g(-3.2SD)の男児で,アプガースコアは1/2点(1分値/5分値),臍帯動脈血pHは7.295であった.生後2日目の児の血液検査で,CMV-IgM,CMV-IgGともに陽性であり,さらに児の血中・尿中からCMV-DNAが検出され,先天性CMV感染症と診断された.また胎盤免疫染色において,抗CMV抗体陽性像を認め,病理検査からも先天性CMV感染症が確認された.
【結語】
本症例では,超音波検査にて胎児中枢神経系の異常を認めたため,先天性CMV感染症も鑑別に挙げられTORCH検査を行ったが,CMV-IgM陰性,CMV-IgG陽性でありCMV既往感染と考えられた.しかし,本症例では妊娠ごく初期に母体がCMVに感染したため,TORCH検査を施行した時には,CMV-IgMが陰性化していた.また,先天性CMV感染症の超音波所見として,いくつか特徴的な所見が報告されているが,本症例では多彩な超音波所見を呈するも先天性CMV感染症を強く疑うことは困難であった.