Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 胎児異常③

(S853)

1歳0か月の小児に病的腹水貯留で発症した顆粒膜細胞腫の一例

A case of juvenile granulosa cell tumor presented with massive ascites

古西 崇寛1, 斎田 司1, 五藤 周2, 後藤 悠大2, 南 洋輔2, 中野 雅之3, 南 学1

Takahiro KONISHI1, Tsukasa SAIDA1, Shu GOTO2, Yudai GOTO2, Yosuke MINAMI2, Masayuki NAKANO3, Manabu MINAMI1

1筑波大学附属病院放射線診断・IVR科, 2筑波大学附属病院小児外科, 3筑波大学附属病院病理診断科

1Department of Diagnostic and Interventional Radiology, University of Tsukuba Hospital, 2Department of Pediatric Surgery, University of Tsukuba Hospital, 3Department of Pathology, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

症例は生後1歳0か月の女児である.
初診2日前から腹部膨隆が認められ,前医を初診した.活気は良好であり,vital signに異常はなかった.
腹部超音波検査,腹部CTで大量腹水を認めたが,明らかな腫瘤性病変は認められなかった.腹水の精査加療目的に,翌日当院へ転送された.
当院で施行した腹部超音波検査では,骨盤から上方に突出する充実性と嚢胞性が混在する腫瘤が認められた.左卵巣に付着する病変であり,左卵巣由来と判断した.右卵巣は正常に認められた.病変の内部には分厚いシート状の充実成分および厚い隔壁が多数確認できた.Doppler signalが豊富で,動脈波形も目立つhypervascularな病変と判断した.石灰化や,積極的に脂肪を考える成分は認められなかった.嚢胞内部は多くのもので無エコーだったが,なかには淡い高エコーを呈する嚢胞も認められ,全体的にステンドグラス状を呈していた.鏡面形成も伴っており,CTでの淡い高吸収所見を加味しても出血成分を伴うものと考えられた.明らかな虚脱など破綻の所見はなかったが,この病変が破裂したことによる腹水貯留と考えられた.子宮に異常は認められなかった.質的診断の難しい左卵巣腫瘍と診断したが,出血を伴い多房性を呈することなどから顆粒膜細胞腫も鑑別に挙げて検査を終了した.超音波検査所見をふまえて追加で提出されたE2は異常高値を示した.
同日に核出術を施行され,juvenile granulosa cell tumorと診断された.腹水細胞診は陰性であった.1.5か月後に左付属器切除術を施行され,横隔膜面の播種結節をあわせて切除されている.現在,化学療法施行中である.
Juvenile granulosa cell tumor of ovaryは偽性思春期早発や腹水貯留で発症することが知られている比較的まれな卵巣腫瘍ではあるが,超音波所見から鑑別に挙げることも可能と思われた.本症例について,若干の文献的考察を加えて報告する.