Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 胎児異常②

(S851)

胎児期に先天性胆道拡張症を疑い,出生後に肝嚢胞と診断された1例

Case report: neonatal hepatic cyst that was misdiagnosed as congenital bile duct dilatation prenatally

新井 聡子, 尾本 暁子, 石井 久美子, 岡山 潤, 真田 道夫, 佐久間 有加, 中田 恵美里, 井上 万里子, 田中 宏一, 生水 真紀夫

Satoko ARAI, Akiko OMOTO, Kumiko ISHII, Jun OKAYAMA, Michio SANADA, Yuka SAKUMA, Emiri NAKADA, Mariko INOUE, Hirokazu TANAKA, Makio SHOZU

千葉大学医学部附属病院婦人科・周産期母性科

Reproductive Medicine, Graduate School of Medicine, Chiba University

キーワード :

【緒言】
先天性胆道拡張症と肝嚢胞は,胎児超音波検査では肝門部嚢胞性病変として観察される.前者は膵・胆管合流異常を合併する胆道癌の高危険群である.最近は出生前に超音波スクリーニングで発見されることが多く,出生後に外科的治療がおこなわれる.後者は経過観察のみで治療を必要としない場合が多い.今回われわれは,出生前の超音波検査とMRI検査で先天性胆道拡張症を疑ったが,出生後に肝嚢胞と診断され経過観察となった症例を経験したので報告する.
【症例】
29歳,1妊1産.妊娠29週時,胎児消化管閉鎖を疑われ当院に紹介となった.超音波検査では,右腹腔内,腎臓よりも頭側,肝臓に接して全体で1.8×1.9×3.1cmの嚢胞像が観察された.この嚢胞像は2cm大の嚢胞数個からなり,それぞれは連続していた.腎臓や胃泡との連続や蠕動運動は見られなかった.また,正常な胆嚢は描出されず,その他胎児超音波上異常は認められなかった.診断として胆道系疾患を第一に考え,鑑別疾患に肝嚢胞,リンパ管腫,重複腸管を考えた.32週時の超音波検査では,肝内,肝門部を中心に分葉状の嚢胞が観察され,正常な胆嚢様の像が描出された.37週時には,肝門部を中心にS4,S5,S8に4.5×3.1×5.1cmの分葉状の嚢胞を認め,門脈の走行に沿うように観察されたことから先天性胆道拡張症と考えた.この時に,主膵管拡張は観察されなかった.MRI(34週時)検査では,肝内に嚢胞性病変を認め,末梢の肝内胆管拡張がなく胆嚢が描出されていることから,先天性胆道拡張症との結果であった.
児は,在胎38週2日経腟分娩にて出生した.出生体重2976g,アプガースコア8/9,女児であった.出生当日の超音波検査では,肝門部に壁が薄く内部無エコーで後方エコー増強を伴う不整形の嚢胞性病変を認め,肝内胆管や総胆管との連続はなかった.また,胆道系や主膵管の拡張はなく胆嚢が確認できた.血液検査ではビリルビン値と肝酵素の上昇,その他の異常はなかった.日齢14,CT検査では,嚢胞は胆道系と連続していなかった.以上から,肝嚢胞の診断にて外科的治療を行わず,1歳4か月現在病変の増悪はなく外来にて経過中である.
【考察】
肝嚢胞は,胆道との交通を持たない良性の嚢胞性疾患であり,内腔は胆管上皮で被覆され漿液性の内容液を貯留している.典型的には,超音波検査にて壁が薄く内部無エコーで後方エコー増強を伴う像を認める.嚢胞の穿刺による細胞診は,再発や感染のリスクが高いため,画像検査や血液検査で悪性を疑う所見がなければ,組織学検査は必要とされない.一方,先天性胆管拡張症は,超音波検査にて腫大した嚢胞部分に連続する細い管腔構造が観察される.しかし,胎児期には肝内胆管は非常に細いため,この所見の有無で出生前に両者を鑑別することは難しいと考える.
肝門部嚢胞性病変の嚢胞の大きさに関しては,2cm以上で児の発育と共に病変の増大傾向が見られる場合は,先天性胆道拡張症の確率が高いという報告もあるが,否定的な報告もあるため,鑑別の決定的な判断に用いることはできないであろう.また,3D超音波検査を用い,解剖学的構造の評価から先天性胆道拡張症の診断を行ったとの報告もあるが,本症例ではMRI検査での鑑別も困難であったため,有用性は低いと考える.
【結語】
肝門部嚢胞性疾患に関しては,大きさや形態・経過以外に,肝内胆管や総胆管との連続を観察することで,診断に近づく可能性が高まると思われる.疾患により治療方針や予後が大きく異なるため,出生前の超音波検査では可能な限り詳細な観察を行い,出生後の管理に生かすことが望まれる.