Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 胎児異常②

(S851)

胎児十二指腸閉鎖・A型食道閉鎖の1例

A case of fetal duodenal atresia and esophageal atresia

三塚 加奈子, 平野 結希, 菅野 秀俊, 林 優, 東郷 敦子, 西村 修, 石本 人士

Kanako MITSUZUKA, Yuki HIRANO, Hidetoshi KANNO, Masaru HAYASHI, Atsuko TOGO, Osamu NISHIMURA, Hitoshi ISHIMOTO

東海大学医学部専門診療学系産婦人科

Depaetment of Obstetrics and Gynecology, Tokai University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
胎児消化管複数同時閉鎖例においては,その胎内診断が困難な場合が多い.今回我々は出生前の診断が困難であったA型食道閉鎖と十二指腸閉鎖合併の1例を経験したので報告する.
【症例報告】
33歳,0経妊0経産.24歳でIgA腎症と診断され,ステロイドパルス療法およびARB内服にて管理をされていた.挙児希望に伴い内服を中止し,経過観察中に自然妊娠に至った.妊娠初期は問題なく経過していたが,妊娠27週時に胎児腹水,羊水過多(AFI 28cm)を認め,精査目的に前医へ紹介となった.前医での精査では胎児腹水,単一臍帯動脈,多指症,羊水過多を認め(この時点では胃の拡張所見はなし),その後妊娠分娩管理目的に当院に紹介となった.当院初診時(妊娠32週4日)の超音波では胎児腹水は減少傾向であったが,double cysts signを認め十二指腸閉鎖が疑われた.AFI 28cmと羊水過多であり,子宮収縮も認めたため,同日管理入院となった.入院翌日に施行したMRIでも超音波検査と同様の所見で胃の拡張が明らかであったが,それ以外には,食道の拡張像を含め他の消化管異常所見は認められなかった.その後,徐々に羊水量は増加していき(AFI 28→30→32cm),胃拡張所見の進行を認めるようになっていったが,児の発育や健常性は概ね良好であり,子宮収縮も塩酸リトドリン投与にてコントロール良好であった.妊娠35週頃から母体の尿蛋白の増加を認め,徐々に腎機能も悪化していったため妊娠37週に帝王切開予定としていたが,妊娠36週5日に破水し,緊急帝王切開となった.児は1936g女児,Aps8/10,臍帯動脈血pH7.253で左多指症を認めた.出生後,呼吸状態は安定していたが,口腔内の分泌物が多く,新生児科にて胃管の挿入を試みたところ挿入不可能であり,X-Pにてcoil up signと下部胸椎の異常を認めた.超音波にて胃の拡張を認めるにも関わらず,X-Pにて腸管内ガス像が認められなかったことから,A型食道閉鎖および十二指腸閉鎖の合併と診断された.日齢2に十二指腸・十二指腸吻合術と胃瘻造設術が施行され,その後児の発育を待って日齢190で食道吻合術が施行された.その後の児の経過は良好である.
【考察】
今回の症例では超音波検査にて典型的なdouble cysts signと羊水過多を認めていたため,十二指腸閉鎖と診断して管理を行っていたが,経過中,胃拡張像の増大傾向も認めていた.同様な胃拡張像の増大は,文献上の報告例においても指摘されており,十二指腸閉鎖と食道閉鎖の合併例における特徴とも考えられる.胃拡張像の増大傾向を認める十二指腸閉鎖疑い例については食道閉鎖の合併の可能性も考慮し,より慎重な管理を行うべきであると考えた.