Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 羊水・羊膜・胎盤

(S845)

羊水注入により診断に至った人魚体の1例

A case of Sirenomelia diagnosed by amniotic fluid injection

山口 摩佑子, 大場 智洋, 瀧田 寛子, 新垣 達也, 仲村 将光, 松岡 隆, 関沢 明彦

Mayuko YAMAGUCHI, Tomohiro OBA, Hiroko TAKITA, Tatsuya ARAKAKI, Masamitsu NAKAMURA, Ryu MATSUOKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学産婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

【症例報告】
人魚体は両下肢の癒合と腎無形成により比較的出生前診断容易な疾患である.今回初期より人魚体を疑っていたが,確定診断に苦慮した人魚体typeⅠの症例を経験したので報告する.
【症例】
32歳,1回経妊1回経産.既往歴,家族歴に特記事項なし.自然妊娠.妊娠12週4日の経腹超音波検査で,臍帯単一動脈,胎児両下肢は大腿骨,脛骨,腓骨がそれぞれ2対確認されたが伸展したままの肢位の所見が指摘された.しかし,両下肢癒合の所見を得ることが出来なかった.妊娠14週5日,腰椎は強度に前屈し,胎児下肢は胸部に接しており,やはり下肢は伸展位のままであった.時より動く両下肢の間に手指を認めたため癒合を確定できなかった.人魚体を疑い腎臓の描出を試みたが確認が出来なかった.妊娠17週2日,羊水過少のため観察が困難となり羊水注入して経腹超音波検査を施行.両下肢の癒合と両側腎無形成を確認し,人魚体typeⅠと診断した.予後不良の説明を行いご両親は妊娠中断せず継続を希望され,現在妊娠管理中である.
【考察】
人魚体の頻度は6万人に1例と稀ではあるが,その特徴的所見のため比較的出生前診断は容易である.人魚体は,大腿骨,脛骨,腓骨の有無と本数によりtypeⅠからtypeⅦに分類され,大腿骨・脛骨は2対ずつ存在するもののうち,腓骨が2対あるものがtypeⅠ,腓骨は1対であるものがtypeⅡ,腓骨の存在しないものがtypeⅢである.大腿骨は癒合し1対であり腓骨が存在しないもののうち,脛骨が2対存在するものがtypeⅣ,脛骨の癒合を認めるものがtypeⅤ.大腿・下腿に1本ずつの骨を認めるものがtypeⅥ,下肢に1本の骨のみを認めるものがtypeⅦである.
typeⅠでは,大腿骨,脛骨,腓骨がそれぞれ2対存在するため,軟部組織の癒合を確定する必要がある.また,妊娠16週以降は腎無形成のため羊水過少が出現するケースが多く,超音波による観察が困難になることが多い.本症例は,妊娠12週に単一臍帯動脈と胎児下肢に動きがないことから人魚体を疑い,妊娠17週で羊水注入を施行し,両下肢の癒合と両側腎無形性から診断に至った.