Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 胎児心臓・血管

(S841)

胎児期より多彩な不整脈を呈したQT延長症候群の一例

A case of fetal long QT syndrome which showed a variety patterns of arrhythmia

住江 正大, 北代 祐三, 太崎 友紀子

Masahiro SUMIE, Yuzo KITADAI, Yukiko TAZAKI

福岡市立こども病院産科

Obstetrics, Fukuoka Children’s Hospital

キーワード :

【はじめに】
QT延長症候群(LQTS)は突然死の原因として近年注目されており,2500出生に1例の頻度で発症すると言われている.QT時間もしくはRR間隔で補正されたQTc時間をもとに診断される.胎児期のQT時間計測は胎児心電図や胎児心磁図で可能であるが,現時点では施行可能な施設が限られる.また胎児期に何らかの所見を呈するLQTSは20‐30%程度と報告されており,必ずしも胎児期の診断は容易ではない.今回,超音波Doppler検査による多彩な不整脈像からLQTSを疑った症例を経験したので報告する.
【症例】
32歳の初産婦.家族歴に遺伝性疾患の既往や突然死の既往歴は認めず.近医で妊娠21週時に不整脈を指摘されていた.心形態異常を認めず経過観察されていた.胎児不整脈の精査目的に妊娠28週時に当科へ紹介となった.当科初診時の胎児超音波検査では胎児発育は週数相当であり,心臓を含めた形態異常は認められなかった.SVC/AAo同時計測波形によりWenckebach型第2度房室ブロックと診断した.その後当科外来で経過観察としていたが,妊娠34週の妊婦健診時に胎児心拍70bpm程度の胎児徐脈を認め,さらに時折短時間で改善する220bpm程度の頻脈も認められたため,精査目的に妊娠34週1日から入院管理として精査を行った.
心房レートは110bpmでほぼ一定であり,心室レートは50‐110 bpmで胎児不整脈のパターンとしては2:1のAV blockがメインではあるがWenchebach型の房室ブロックのパターンを示すこともあった.時折数秒程度持続する胎児頻脈を認め,Torsade de Pointes(TdP)を伴う重症型の先天性QT延長症候群が強く疑われた.TdPによる胎児死亡予防のため,妊娠34週4日から硫酸マグネシウムの持続点滴を開始した.一時的に頻脈発作は認められなくなったが,妊娠35週3日に再度TdPが出現した.循環器科および新生児科と協議の上,胎児死亡を回避すべくterminationの方針とし,妊娠35週5日に帝王切開分娩を行った.児は2215gの男児でApgar score 6点(1分),9点(5分)で出生し,出生後の心電図検査でQTcが600ms以上であり,QT延長症候群と確定診断された.メキシチレン塩酸塩による内科的治療がすぐに開始されたが,反応性に乏しく,日齢0に一時ペーシングのためのリード埋め込みを施行された.
児は生後の遺伝子検査でLQT2と診断された.
【考察】
胎児期の症状としては胎児徐脈が最も多く報告されているが,房室ブロックなど多彩な胎児不整脈像を認める場合にはLQTSを念頭においた精査が必要であると考えられた.