Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 母体②

(S839)

動脈性出血を伴った外陰部の懸垂性軟性線維腫の一例

A case of soft fibroma of the pudendum with arterial bleeding

的野 玲佳1, 内田 政史1, 長田 周治1, 相園 多美子2, 名嘉眞 武國3, 原田 さやか4, 安陪 等思1

Reika MATONO1, Masafumi UCHIDA1, Shuji NAGATA1, Tamiko AIZONO2, Takekuni NAKAMA3, Sayaka HARADA4, Toshi ABE1

1久留米大学医学部放射線医学教室, 2久留米大学病院臨床検査部, 3久留米大学医学部皮膚科学教室, 4久留米大学病院病理部

1Department of Radiology, Kurume University School of Medicine, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Kurume University Hospital, 3Department of Dermatology, Kurume University School of Medicine, 4Department of Pathology, Kurume University Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回我々は,動脈性出血を伴った外陰部の懸垂性軟性線維腫の症例を経験したので,超音波などの画像所見を中心に報告する.
【症例報告】
患者:60代,女性.
現病歴:10年ほど前より,右外陰部に1cm大の有茎性の常色腫瘤に気付くも放置.2年前,入浴中,排水溝に腫瘤が吸い込まれ,挟まれた後から,徐々に増大してきた.その後急に出血し始め,止血しないため,当院皮膚科受診.腫瘍の一部より拍動性の出血があり,結紮止血施行された.切除目的にて入院となる.
現症:右外陰部に3cmほどの有茎性,常色腫瘤が見られた.腫瘤は,やや不整で,弾性軟.茎は拍動性.
超音波検査所見:垂れ下った腫瘤部のサイズは32×32mm,茎の太さは径7×4mm.腫瘤内部は不均一な充実性で,低エコーと高エコー域が不均一に混在.ドップラーでは腫瘤内部に比較的強いflowが見られた.茎および腫瘤内部は脈管構造に富んでおり,パルスドップラーでは,動脈系,静脈系の脈管が多数走行していた.
腹部MRI所見:腫瘤はほぼ均一で,T1WIで筋肉と等信号,T2WIで高信号を呈した.腫瘤に向かい流入する動脈によるflow voidも散見された.造影dynamic studyでは,辺縁優位に漸増的に造影された.
皮膚科にて腫瘍切除術が施行された.
病理組織学的検査所見:Soft fibromaの所見であった.表皮に明らかな異型はなく,真皮内で膠原線維の増生が目立った.また,拡張した血管が見られた.
【考察】
軟性線維腫は皮膚色から淡褐色の半球状から疣状の結節で,頚部,腋窩,前胸部,鼠径部などにできやすい.老化現象の一つと考えられている.巨大となり皮膚面から垂れ下がるものは懸垂性線維腫と呼ばれている.外陰部に発生したものはしばしば大きくなることがあり,その原因として,恥部であるために早期受診がためらわれることや,もともと外陰部は血管,リンパ管が豊富なこと,懸垂性のため茎部で圧排されて血液やリンパ液がうっ滞しやすいことなどが挙げられている.今回,超音波検査にて腫瘤や茎部の内部性状や血流の評価が得られ,さらに動脈系の脈管構造も多数走行しており,再度,動脈性出血の可能性も示唆された.我々が検索した範囲においては,懸垂性軟性線維腫を超音波検査で画像評価した報告例は少なく,この症例のように,動脈性出血の可能性の評価も含めて,超音波検査は有用と考えられる.