Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科 母体②

(S838)

自然流産後にカラードプラ法で診断し内視鏡手術で治療した子宮体下部仮性動脈瘤の1例

The pseudoaneurysm of uterus that diagnosed by ultrasonic color Doppler method after miscarriage and treated by endoscopic surgery

太田 創, 福士 義将, 山本 雅恵, 簑輪 郁, 常松 梨紗, 滝本 可奈子, 鈴木 徹平, 比嘉 健, 和田 真一郎, 藤野 敬史

Hajime OTA, Yoshiyuki FUKUSHI, Masae YAMAMOTO, Kaoru MINOWA, Risa TSUNEMATSU, Kanako TAKIMOTO, Teppei SUZUKI, Takeru HIGA, Shinichiro WADA, Takafumi FUJINO

手稲渓仁会病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【緒言】
子宮仮性動脈瘤は分娩後や子宮手術後の大量出血の原因疾患の一つであるが,自然流産後に発生した症例報告は稀である.仮性動脈瘤は超音波検査で内部に乱流を伴う嚢胞性病変として描出されるが,カラードプラ法が診断の一助になる.今回,初期の自然流産から8週後に超音波検査で診断された子宮体下部仮性動脈瘤の1例を経験したので報告する.
【症例】
29歳の未経妊婦で,妊娠初期に当院を受診したが初診時にはすでに自然流産していた.血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)値は1週間で1824mIU/mlから102mIU/mlまで低下し,超音波検査では異常所見を認めなかったので経過観察していた.初診時から58日後に大量の性器出血と悪心を主訴に再受診した.GE社製Voluson P8の経腟プローブを使用し経腟超音波検査を施行したが,子宮内腔の厚みは10mm以下だった.子宮体下部前壁に長径14mmで内部に乱流を伴う嚢胞性病変を一つ認め,カラードプラ法でその乱流は明瞭に描出された.出血は持続し,ヘモグロビン値が10.2g/dlから7.7g/dlまで低下する進行性の貧血と診察中の意識レベル低下を認めた.子宮内仮性動脈瘤と出血性ショックと診断し,腹腔鏡下子宮動脈クリッピングおよび子宮鏡下病巣除去術を施行した.子宮鏡下に出血源である内子宮口から体下部前壁に及ぶ隆起性病変を同定し,これを切除したところ,血管開口部が露わになった.病変切除と止血を行い,可吸収性止血剤を子宮内に充填して手術を終了した.周術期に濃厚赤血球液8単位と新鮮凍結血漿4単位を輸血した.病理組織診断は,変性壊死した絨毛および脱落膜を含む子宮内容物と,頸部間質や脱落膜変化を伴う子宮内膜に太い動脈を含む子宮頸部病変だった.
術後48日には月経が再開し,その周期で実施した子宮鏡検査では子宮内腔に遺残病変や癒着は認めなかった.
【結論】
子宮内容除去術未施行の流産後症例で子宮内仮性動脈瘤を経験した.流産後に異常出血と子宮内嚢胞性病変を認めた際は,カラードプラ法を併用する超音波検査で仮性動脈瘤を迅速かつ簡便に診断できると考えられた.