Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
乳腺

(S830)

穿刺吸引で小嚢胞消失確認後の経過中に嚢胞内腫瘍像が明瞭化した非触知乳房腫瘤の一例

A case of a non-palpable breast masses intracystic tumor was clarity in the course after confirming small cyst disappearance in aspiration

中谷 守一

Shuichi NAKATANI

南大阪病院乳腺外科

Breast Surgery, Minami Osaka General Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳房内小嚢胞は乳房超音波検査(以下US)では非常に検出頻度が高く検診時のみならず精査時にも過度に評価しないように注意が必要である.我々は約1cm径の嚢胞内に腫瘤像を疑診し穿刺吸引により嚢胞像消失を認めたが,穿刺液細胞診suspiciousのため経過観察したところ約2か月後に明瞭な嚢胞内腫瘍像を確認し非触知小腫瘤として切除し乳管内乳頭腫と病理診断された症例を経験した.通常は乳腺穿刺による嚢胞像消失所見をもって単純嚢胞とすることが多いが,今回の経験はUS下穿刺吸引での嚢胞像消失のみをもって単純に嚢胞内腫瘍を否定せず経時的な当該領域の詳細な観察が必要な可能性を示すものと考えられたので報告する.
【症例】
症例は46歳女性.X年12月当科初診.近医よりUSで左A領域(以下,A),嚢胞とされ精査目的に紹介された.当科ではMG(1,1)US(1,3)で左A嚢胞内腫瘍と診断された.MRIでは左Aに10mm大のT1T2ともに高信号を示す嚢胞性病変を認め,内部に低信号もみられた.造影剤で軽度造影され,wash outも見られるため悪性疑いとされた.右乳房には異常を認めなかった.左A腫瘤像については非触知腫瘤として腫瘤摘出術が予定されたが,X+1年4月転医した.X+1年6月当科を再受診した際のUSでは左A嚢胞内に腫瘤像が確認できず吸引細胞診を施行したところ嚢胞の消失を認めた.細胞診検査結果はsusupicious,乳頭状病変を示唆され経過観察した.X+1年8月,嚢胞内腫瘤像が明瞭となり局所麻酔下に腫瘤切除術を施行した.術後病理検査結果はprobable intraductal papillomaであった.
【考察】
嚢胞はUSで看過することが多いが,内部に充実性腫瘤像を認める際には嚢胞内腫瘍として精査すべきである.本例は検診USでは嚢胞,当科初診時USでは嚢胞内腫瘍,経過中USでは嚢胞内腫瘤像が確認困難であった.穿刺吸引により嚢胞消失を確認した.通常は嚢胞像消失をもって単純嚢胞とすることが多いが,今回の経験は穿刺による嚢胞像消失=単純嚢胞=非嚢胞内腫瘍 とはせず画像診断内容や細胞診検査結果などを総合して嚢胞内腫瘍を疑える際には経時的な当該領域の詳細な観察が必要であることを示唆する症例として示唆に富むものと考えられる.