Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 消化管:良性

(S819)

成人腸重積症の一例

A case of adult invagination

馬場 昭好, 菱田 泰子, 小海途 初音, 鈴木 千夏, 末兼 豪厳, 浅井 奎子

Akiyoshi BANBA, Yasuko HISHIDA, Hatsune KOGAITO, Chika SUZUKI, Takeyoshi SUEKANE, Keiko ASAI

石鎚会田辺中央病院臨床検査科

Clinical Laboratory Department, Tanabe Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
腸重積症は多くは小児に見られる疾患であり,成人での発症は比較的まれである.また小児ではほとんどが特発性であるのに対し,成人では器質的疾患に起因するものが多い.今回我々は腹部超音波検査にて腸重積症を指摘し,大腸癌が発見され手術に至った症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
【症例】
80歳男性.腎盂腎炎にて入院加療中であったが,上腹部痛の訴えがあり精査目的にて腹部超音波検査を行った.超音波検査で左下腹部にmultiple concentric ring signを認め,先進部には32×31mmの内部不均一な腫瘤像が描出された.腫瘤内,重積腸管内には血流を認め,腫瘤内血流の抵抗指数(RI)は0.78であった.口側の腸管拡張はわずかに認める程度でイレウスは認められなかった.その後CT検査でもS状結腸に腸重積が確認されたため,大腸癌による腸重積症の疑いにて外科的処置が行われた.術中では腸の重積は解除されていたがS状結腸に腫瘤が確認されたため,部分切除術が施行された.切除されたS状結腸には3cmと2cmの2個の腫瘤性病変を認め肉眼的分類はいずれもIp型,病理学的にadenocarcinomaと診断された.リンパ節への転移は認めなかった.
【考察】
成人の腸重積症は全体の約5%と比較的まれである.成人における腸重積症の発生原因は腫瘍などの器質的疾患によるものが約90%とされ,そのため超音波検査で腸重積を認めた場合,先進部の詳細な観察が重要である.本症例も先進部に腫瘤を認めたため器質的疾患による腸重積が疑われた.しかし一方で約7%に特発性のものも存在するため超音波診断は慎重に行うべきである.大腸癌による腸重積症は臨床症状として腹痛や下血が多く,またS状結腸や盲腸が好発部位とされる.本症例においてもS状結腸に腫瘤を認めたが,主訴は上腹部痛のみで典型的ではなく嘔吐などの消化管症状も乏しかったため,検査施行時には積極的に腸重積症は疑われていなかった.当科では腹部超音波検査はルーチンで上下消化管もスクリーニングしているため腸重積症は今回偶発的に発見されたと言える.
【結論】
腹部超音波検査にて偶発的に発見され手術に至った結腸腸重積症を経験した.腸管疾患は非典型的な部位での病変や主訴が乏しい場合もあり,超音波検査は検査者の柔軟な思考能力,知識が必要と考える.