Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 消化管:悪性

(S817)

小腸間膜から発生したdesmoid tumorの一例

Desmoid tumor of jejunal mesentery:a case report

山口 梨沙1, 本間 明子1, 藤沢 一哉1, 関 春菜1, 志賀 淳治2, 長沼 裕子3, 石田 秀明4

Risa YAMAGUCHI1, Akiko HONMA1, Kazuya FUJISAWA1, Haruna SEKI1, Junji SHIGA2, Hiroko NAGANUMA3, Hideaki ISHIDA4

1津田沼中央総合病院検査科, 2津田沼中央総合病院病理部, 3市立横手病院消化器科, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 2Department of Pathology, Tsudanuma Central General Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
Desmoid tumorは比較的稀な腫瘍であるが,腹腔内の場合では腸間膜から発生することが多い.我々はそのような一例を経験したので超音波像を中心に報告する.
使用診断装置:東芝社製:Aplio500.
【症例】
70歳代男性.以前から高血圧と肝硬変を有し2年前に大腸癌切除術を受けている.現在無症状であるが,術後の経過観察の一環として施行された超音波検査で左上腹部に4.6×4.0cmの腫瘍を認めた.
【腹部超音波検査】
腫瘤は,楕円形で境界明瞭で明瞭な外側音響陰影と後方エコー増強を認めた.腫瘤は腹腔内のどの臓器とも関連が無く,腫瘤の位置から腸間膜から発生した病変と考えられ,desmoid tumor等も考えられたが大腸癌切除の既往があり孤立性リンパ節転移なども否定できず,腹腔内に他の異常所見はみられず,この病変は外科的切除の対象となると判断し腫瘤摘出術を施行した.
【CT】
左腸間膜部にmassを認め,大腸癌の再発と,desmoid tumorが鑑別に挙がった.
【MRI】
CTと同様に腸管膜に4.6cmの腫瘤を認め,MRIの信号的にはdesmoid tumorとして矛盾しない所見であった.
【経過】
Desmoid tumor等も考えられたが大腸癌切除の既往があり孤立性リンパ節転移なども否定できず,腹腔内に他の異常所見はみられず,この病変は外科的切除の対象となると判断し腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は空腸腸間膜と連続しその近傍組織を含め切除可能であった.腫瘤の割面は乳白色で病変全体に線維化が強い事を示していた.組織学的に,腫瘤の主体はfibroblastでdesmoidに一致する所見であった.術後経過は良好で現在外来通院中.
【考察】
Desmoid tumorは膠原組織を主体とする血管に富む腫瘍で,病理学的には良性であるが周囲に浸潤性に発育し容易に局所再発するため外科的切徐術の適応疾患とされている.過去の報告例は組織学的検討が中心であり超音波所見の記述があるものは比較的稀であるが,超音波所見の後方エコー増強の存在は腫瘤全体がほぼ均一な組織構成であるということを示唆しており,一方,明瞭な外側音響陰影の存在は,腫瘤が周囲組織と音速がかなり異なることを示唆しており,ほぼ全体が線維組織で構成されていることを考えると,超音波所見が組織の質を反映していたと思われた.
【まとめ】
比較的稀な腸間膜desmoid tumorの1例を超音波所見を中心に報告した.明瞭な外側音響陰影と後方エコー増強はdesmoid tumorの特徴を示していると思われるが,この視点の妥当性に関しては更に症例の蓄積が必要である.