Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 消化管:悪性

(S816)

EUSによる評価が有用であった嚢胞状リンパ節転移を伴う進行胃癌の1例

A case of advanced gastric cancer with lymph node metastases diagnosed by EUS

鈴木 博貴, 肱岡 範, 原 和生, 近藤 尚, 山雄 健次

Hirotaka SUZUKI, Susumu HIJIOKA, Kazuo HARA, Hisashi KONDO, Kenji YAMAO

愛知県がんセンター中央病院消化器内科部

Gastroenterology, Aichi Cancer Center Hospital

キーワード :

【症例】
70歳代男性
【主訴】
胃痛
【既往歴】
特記すべき事項なし
【現病歴】
2014年から胃痛出現.前医受診し,上部消化管内視鏡検査(EGD)にて胃癌を指摘され2015年4月当院消化器外科紹介となった.当院EGDでは前庭部小彎を主座とする3型進行胃癌,深達度はSSと診断した.腹部造影CT検査(CECT)では,明らかなリンパ節転移や肝転移を疑う所見はみられなかったが,#8リンパ節付近に長径30mm大で内部に一部造影効果を伴う嚢胞性病変あり,精査目的に当科紹介となった.同年5月,超音波内視鏡検査(EUS)施行.EUSでは,指摘された病変は境界明瞭な嚢胞変性を伴う腫瘤性病変として確認された.腫瘍内部には隔壁を伴う嚢胞性病変と充実性部分が混在しており,充実腫瘍の嚢胞変性が最も考えられた.ソナゾイド®による造影EUSを施行すると充実部分は早期より強く染影効果を認めた.胃癌のリンパ節転移の他,神経鞘腫,paraganglioma,GISTなどが鑑別として考えられた.治療方針決定に組織診断が必要と判断し,EUS-FNAを施行した.胃生検標本と細胞形態の類似した低分化腺癌の所見が見られ,胃癌のリンパ節転移で矛盾しない所見であった.以上よりcT3 N1(Bulky N)M0,cStage IIIAと診断.Bulky Nのため術前化学療法(NAC)を先行させる方針となった.S-1 80mg/m2(day1-21)+CDDP 60mg/m2(day8)を2コース施行,CECTでは#8付近のリンパ節転移は増大傾向であった.しかし,EUS再検では大きさ,形態は前回よりもやや増大していたものの,内部はデブリエコーを伴うものの充実部分は消失しており,ソナゾイド®造影でも,隔壁が造影されるのみで,NAC前に認められた染影効果を伴う充実部分は消失していた.以上より,リンパ節は増大傾向にあるものの壊死に伴う変化と考えられ,原発巣は軽度縮小傾向であったので,NACが奏功していると判断し幽門側胃切除術,D2郭清を施行した.病理所見では,漿膜下層にまで浸潤した低〜中分化型腺癌を認め,線維化や泡沫細胞の集簇を認めた.既知のリンパ節病変は線維化や泡沫細胞の集簇,一部に凝固壊死の形成がみられたがviableであった.NAC治療効果はypT3N3aM0,ypStageIIIB,grade 1b.術後経過は良好,術後補助化学療法は希望されなかったため,現在無治療にて経過観察中である.
【考察】
今回我々は,EUSによる嚢胞状リンパ節転移の評価が有用であった1例を経験した.一般に嚢胞状リンパ節転移を来たすものは頭頸部腫瘍に多いとされており,胃癌においてリンパ節転移に嚢胞性変化がみられることは稀である.また,自験例では,嚢胞性変化を来したリンパ節転移はCT上増大傾向であったが,ソナゾイド®を用いたEUS(およびFNA)による詳細な観察,組織診断を行う事でNACが奏功していると判断しえた.示唆に富む症例と考えられ,若干の文献的考察を加えて報告する.尚,リンパ節に対するソナゾイド®造影の使用は当院IRB承認の下,患者の同意を得て施行した.