Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 膵

(S814)

膵外発育を示した膵癌の3例

Pancreatic carcinoma showing a marked extra growth:report of 3 cases

鈴木 さとみ1, 石田 秀明1, 大山 葉子2, 渡部 多佳子3, 黒田 聖仁4, 岡庭 信司6, 長沼 裕子5

Satomi SUZUKI1, Hideaki ISHIDA1, Youko OOYAMA2, Takako WATANABE3, Masahito KURODA4, Shinji OKANIWA6, Hiroko NAGANUMA5

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田厚生医療センター臨床検査科, 3秋田赤十字病院検査科, 4福島赤十字病院消化器内科, 5市立横手病院消化器科, 6飯田市立病院消化器内科

1Gastrointestinal Medicine, Akita Red Cross Hospital, 2Clinical Laboratory Department, Akita Kousei Medical Center, 3Clinical Laboratory Department, Akita Red Cross Hospital, 4Gastrointestinal Medicine, Fukushima Red Cross Hospital, 5Gastrointestinal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 6Gastrointestinal Medicine, Iida Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
膵癌の多くは膵管癌(ductal adenocacinoma)で膵内へ浸潤性に発育し腫瘤を形成し,造影超音波では周囲膵組織に比して低染域として表現されることが多い.我々は最近この特徴から離れた膵癌を3例経験したので,その超音波所見を中心に報告する.使用診断装置:東芝社製:AplioXG, 500. GE社:LogiqE9.日立アロカ社製:Ascendus, Preilus.超音波造影剤はソナゾイド®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例】
症例1:50歳代男性:腺扁平上皮癌(adenosquamous cell carcinoma):全身倦怠感と体重減少を主訴に消化器科受診.血液検査上,軽度肝機能障害を認め,腫瘍マーカーは正常値であった.超音波上10×11cmの円形腫瘤を膵尾部に認めた.造影超音波上腫瘤は早期から不均一に濃染しその状態は長時間持続した.CTでもほぼ同様の所見であり,画像所見より腺房細胞癌が疑われた.EUS-FNABで十分な組織採取し腺扁平上皮癌と組織診断.化学療法を行ったが,腫瘍破裂により約2か月後に永眠された.
症例2:70歳代女性:腺房細胞癌(Acinar cell carcinoma):右下腹部腫瘤を主訴に消化器科を受診.血液検査上,軽度の肝機能障害を認めた.超音波上約4cm大の円形腫瘤を膵頭部-十二指腸間に認めた.膵自体に異常は認めず膵管や胆管の拡張もみられなかった.造影超音波上腫瘤は早期から不均一に濃染しその状態は長時間持続した.CTでもほぼ同様の所見であった.画像所見より十二指腸由来のGISTを疑った.EUS-FNABを施行し腺癌の診断であった.膵癌あるいは十二指腸癌の診断で手術を施行し,組織学的に腺房細胞癌と診断された.術後再発を来し約半年後に永眠された.
症例3:40歳代男性:腺房細胞癌(Acinar cell carcinoma):腹部不快感を主訴に消化器科を受診.血液検査上,軽度の肝機能障害を認め,腫瘍マーカーは正常値であった.超音波上4X4cmの円形腫瘤を膵頭部に認め,膵管は軽度拡張していた.造影超音波上腫瘤は早期から不均一に濃染しその状態は長時間持続した.CTでもほぼ同様の所見であった.画像所見より腫瘤形成性膵炎が疑われたが,ERCP下細胞診・EUS-FNABでは腺癌の診断であった.膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行.組織学的に腺房細胞癌と診断された.
【まとめと考察】
通常型膵癌(膵管癌ductal adenocacinoma)はBモード上境界不鮮明な膵内に沿って発育する低エコー病変として表現されることが多い.造影超音波ではどの時相でも周囲膵組織に比して染まりは淡く不均一であることが多い.今回の3例は,a)膵外進展が顕著,b)病変は円形で境界明瞭,c)造影超音波上病変はどの時相でも周囲膵組織に比して不均一に濃染する,という所見であり,通常見られる膵癌の所見と大きく異なるものであった.
一般に膵管癌が浸潤性に発育するのに対し,膵腺房細胞癌では膨張性・圧排性に発育する事が特徴的とされており,腺扁平上皮癌でも同様の発育を示した症例が報告されている.今回我々が提示した所見も,それらの発育形態の違いが関連している可能性が示唆された.腺房細胞癌や腺扁平上皮癌の特徴的超音波所見に関しては今後さらなる症例の検討が必要である.