Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 膵

(S813)

EUSが診断に有用であった遺伝性出血性毛細管拡張症に合併した膵動静脈奇形の1例

A patient with pancreatic arteriovenous malformation associated with Hereditary hemorrhagic telangiectasia in which EUS was useful for diagnosis

関根 匡成

Masanari SEKINE

秋田大学第一内科消化器内科

Gastroenterology, First Department of Internal Medicine, Akita University School of Medicine

キーワード :

症例は54歳男性.近医での腹部造影CTで膵尾部に多血性腫瘤を指摘され,精査目的に当院に紹介受診した.血液検査では異常所見は認めなかった.現症としては,習慣性に鼻出血を認めており,指尖に毛細血管拡張を認めた.家族歴では,母親にも習慣性の鼻出血を認め,母方の叔父が遺伝性出血性毛細管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia : HHT)の診断であった.前医CTでは,肝に多数のAPシャントを認め,当院で施行された上部内視鏡検査では,胃粘膜に数箇所の毛細血管拡張症を認めた.以上,現症,家族歴,および画像所見よりHHTと診断した.画像所見上,肺や脳には動静脈奇形(arteriovenous malformation; AVM)は認めなかった.膵病変に関しては,腹部造影CTで膵尾部に8mm大の強い造影効果を認める辺縁整の腫瘤を認めた.膵尾部多血性腫瘤の鑑別診断としては,膵神経内分泌腫瘍が第一に考えられたが,膵AVMも挙げられ,精査目的に超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography; EUS)を施行した.EUSで膵尾部に7mm大の無エコーの占拠性病変を認めた.病変に流入もしくは,流出を疑う血管様構造を認め,カラードップラーで流速が確認できた.その血管様構造を追従して観察すると脾動脈から腫瘤を経由し,脾静脈に繋がる像が得られ,上記より膵AVMと診断した.HHTは,常染色体優性遺伝の遺伝性疾患であり,本邦での頻度は5000から8000人に一人と言われている.合併するAVMは,肺,脳,肝臓に多い.膵AVMも比較的稀な疾患であり,文献的には100例ほどしか報告がない.そして,HHTに合併する膵AVMに関しては,本邦での報告は1例のみであった.今回,EUSによる詳細な観察により,HHTに合併した膵AVMと診断した1例を経験したので文献的考察も含め,報告する.