Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 その他②

(S811)

腹痛症例の時間外診療における腹部超音波検査の有用性と限界

Abdominal ultrasonography for off-hour consultation of patients with abdominal pain

富澤 稔1, 篠崎 文信2, 長谷川 留魅子3, 白井 芳則3, 本吉 慶史4, 杉山 隆夫5, 山本 重則6, 石毛 尚起7, 吉田 孝宣8

Minoru TOMIZAWA1, Fuminobu SHINOZAKI2, Rumiko HASEGAWA3, Yoshinori SHIRAI3, Yasufumi MOTOYOSHI4, Takao SUGIYAMA5, Shigenori YAMAMOTO6, Naoki ISHIGE7, Takanobu YOSHIDA8

1独立行政法人国立病院機構下志津病院消化器内科, 2独立行政法人国立病院機構下志津病院放射線科, 3独立行政法人国立病院機構下志津病院外科, 4独立行政法人国立病院機構下志津病院神経内科, 5独立行政法人国立病院機構下志津病院リウマチ科, 6独立行政法人国立病院機構下志津病院小児科, 7独立行政法人国立病院機構下志津病院脳神経外科, 8独立行政法人国立病院機構下志津病院内科

1Department of Gastrotenterology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 2Department of Radiology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 3Department of Surgery, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 4Department of Neurology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 5Department of Rheumatology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 6Department of Pediatrics, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 7Department of Neurosurgery, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 8Department of Internal Medicine, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital

キーワード :

【目的】
腹痛を主訴とする症例には重篤な疾患が存在することがあり,迅速で的確な診断が求められる.時間外診療ではCT,MRTを用いた精査が困難なことがある.腹部超音波検査は時間外診療でも施行することができる.腹痛を主訴とする症例に対する時間外診療では腹部超音波検査は唯一の画像診断となる.そこで今回我々は,腹痛症例の時間外診療における腹部超音波検査の有用性と限界を明らかにすることを試みた.
【対象】
平成22年4月より27年4月まで当院平日時間外,土日休日当院外来を受診,または入院中に腹痛を自覚し腹部超音波検査を施行した症例に対して超音波診断とその後の診療による確定診断の一致,不一致についてretrospectiveに解析した.他院を紹介した症例では返信の得られた症例を選択した.対象は男性14例,女性22例であった.
【方法】
診断の一致した例は急性胆管炎3例,急性膵炎4例,胆管癌1例,急性虫垂炎9例,憩室炎3例,大腸癌1例等であった.一方診断が不一致な例は,胆管癌,S状結腸捻転,急性虫垂炎,小腸アニサキス,突発性腹腔内出血,子宮頚癌の再発,が各一例であった.不一致な原因として胆管癌は消化管ガスのために総胆管の描出が困難,S状結腸捻転は著明な消化管ガスのために精査が困難であった.急性虫垂炎では虫垂の同定が困難であった.小腸アニサキスは,腹部超音波検査ではイレウス,腹膜炎の診断で他院に紹介し判明した.突発性腹腔内出血は,腹部超音波検査では腹水を認めるのみであり,腹腔試験穿刺にて判明した.現在まで経過観察中だが,著変はみられていない.子宮頚癌の再発では,腹部超音波検査では骨盤腫瘍を認めたが,紹介した婦人科にて判明した.
【結論】
腹部超音波検査は胆膵等の実質臓器の診断を的確に診断することが可能なことが示された.消化管疾患の診断も可能なことが示唆される.腹部超音波検査を施行すると,時間外診療でも大腸癌の診断も可能であり,速やかな診療方針の検討に有用と考えられる.一方,消化管ガスで病変の描出が阻害される場合は,腹部超音波検査による診断は困難と考えられる.虫垂の描出が困難な急性虫垂炎が経験された.急性虫垂炎は適切に診療されないと重篤化する可能背胃がある.虫垂が描出されない場合は急性虫垂炎の診断は困難なので,CTによる精査または急性虫垂炎疑いとして診療することが望ましいと考えられた.婦人科疾患では,腹部超音波検査では可能性が示唆された場合は,婦人科に相談することが適切と考えられた.