Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 その他②

(S811)

腹部救急疾患においてCT検査と超音波検査を比較することに意味があるのか

Is it useful to compare US to CT in emregency?

若杉 聡1, 梅木 清孝1, 保坂 祥介1, 佐藤 晋一郎1, 石田 秀明2

Satoshi WAKASUGI1, Kiyotaka UMEKI1, Shousuke HOSAKA1, Shinnichirou SATOU1, Hideaki ISHIDA2

1千葉西総合病院消化器内科, 2秋田赤十字病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Chibanishi General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
当院は,救急疾患に力を入れる民間病院である.連日,腹部の救急疾患が搬送される.その中で,超音波検査が有用であった症例,CTが有用であった症例を具体的に呈示したい.
【症例1:超音波検査が有用だった症例】
44歳,男性.心窩部痛を主訴に当科受診した.血液検査で肝胆道系酵素の上昇と軽度の黄疸を認めた.CTでは胆嚢壁が軽度肥厚していた以外,胆道系に異常所見を認めなかった.腹部超音波検査を施行したところ,胆嚢内に充満する結石を認め,肝外胆管にも無数の結石を認めた.X線陰性結石の診断には超音波検査が有用である.
【症例2:CTが有用だった症例】
42歳,男性.右下腹部痛を主訴に受診した.腹部超音波検査で盲腸近傍に盲端のあるソーセージ様の腫瘤を認め,腫大した虫垂と考えた.虫垂は層構造が保たれ,カタル性ないし軽度の蜂窩織炎性虫垂炎と診断した.しかしCTでは虫垂根部が弯曲し,2個の噴石を認めた.手術の結果は壊疽性虫垂炎だった.超音波の動画を見直すと,虫垂根部の弯曲部は部分的に描出されていたが,この部分は層構造が見られず,壊疽性虫垂炎に矛盾がなかった.
【症例3:病院の治療方針に左右される症例】
60歳,女性.右下腹部の圧痛を主訴に受診した.Bcburney圧痛点,Lans圧痛点を認めた.Blumberg徴候も認め,急性虫垂炎を疑った.虫垂は回盲部に指摘できたが,短径6mm未満であった.虫垂の層構造の乱れがなく,第3層(粘膜下層)の肥厚も認めなかった.カタル性虫垂炎として保存的治療とした.
【考察】
超音波検査は,X線陰性結石の診断には有用である.症例1は,血液検査で胆道系酵素が上昇していた.CTを最初に行ったが,結石を確認できなかった.患者の顔貌も考慮し,入院させた上で超音波検査を行った.胆管に多数の結石を認めたが,検査当初,胆管を十二指腸下行部と誤認した.検査者によっては技術的に病変を描出することができない可能性がある.症例2では腫大した虫垂を描出できたが,根部の描出がむずかしく,CTと対比したところ,虫垂根部の所見が不十分と考えられた.超音波検査は消化管ガスの影響で盲点があるため,時に病変の描出が困難であり,この点を十分認識する必要がある.症例3はカタル性虫垂炎と診断した.カタル性虫垂炎を内科的に治療し,蜂窩織炎性虫垂炎や壊疽性虫垂炎を手術する施設では,超音波検査は有用である.虫垂炎すべてを原則的に手術する施設では,腫大した虫垂を確実に描出できるCTの方が有用である.本ディスカッションでの重要な点は,超音波検査を誰が行うかにもかかっている.超音波を長年専門に行ってきた医師や技師が検査する場合と,卒後1-2年の臨床研修医が行う場合とでは結果が異なる.上記症例1-3は臨床研修医が救急外来で診断することが難しい.しかし,多くの施設では,救急外来で最初に患者を診るのは卒後1-2年目の臨床研修医である.この点を理解した上で,CTと超音波検査のどちらが有用かを討論すべきである.おそらく超音波医学会で行わなければならないのは,臨床研修医の教育であると考える.
【結語】
一定の技術力のある検査者が検査を行う場合,超音波検査は腹部救急疾患の診断に有用である.しかし,CTと補完して行うことも重要である.