Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 その他②

(S810)

消化器内科診療所における腹部癌診断と超音波検査の寄与

The ultrasonography for the diagnosis of the abdominal cancer in the gastroenterology clinic

倉光 智之

Tomoyuki KURAMITSU

くらみつ内科クリニック内科

Internal Medicine, Kuramitsu Clinic

キーワード :

【目的】
消化器内科診療所では,診察から検査まで1人の医師がすべて行い,腹部超音波検査は診察手技の一つとして短時間で行われる場合が多い.消化器内科診療所の超音波検査の役目は症状の原因診断と無症状の癌発見が主であり,当診療所では年間1,600件超の腹部超音波検査を施行している.今回,当診療所で診断した腹部癌症例を解析し診療所での超音波検査の理想的あり方を検討した.
【方法】
対象は2006年9月より2015年11月まで当診療所で診断した腹部癌214例で,同期間の検査数は,腹部超音波13,542例(ソナゾイド®造影検査248例を含む),上部内視鏡8,725例,下部内視鏡2,974例,すべての検査は同一医師1人で行った.超音波機器は東芝メディカル社のXario,Aplio 400を用いた.本検討は秋田県医師会倫理委員会の承認を得ている.
【成績】
1)腹部癌214例:癌発見年齢中央値67歳(35-88歳),男性137例,女性77例.領域は消化管132例(胃60例,大腸60例,食道11例,小腸1例),肝胆膵67例(初発肝臓28例,再発肝癌15例,原発不明肝転移2例,膵臓10例,胆道5例,胆嚢4例,十二指腸乳頭3例),泌尿器6例(腎臓2例,尿管2例,膀胱2例),婦人系6例(卵巣4例,子宮2例),悪性リンパ腫3例.2)癌発見法は超音波32.7%(70/214),上部内視鏡32.7%(70/214),下部内視鏡27.6%(59/214),CT・MRI 7.0%(15/214).3)部位別の超音波による癌診断は,消化管2.3%(3/132),肝胆膵77.6%(52/67),泌尿器100%(6/6),婦人系100%(6/6),悪性リンパ腫100%(3/3).4)癌患者の受診契機は直接受診63.6%(136/214),診診紹介32.2%(69/214),病診紹介4.2%(9/214).5)受診契機別の超音波発見癌と領域は,直接受診31.6%(43/136):肝胆膵79.13%(34/43),消化管11.1%(2/43),泌尿器4.7%(3/43),婦人科7.0%(3/43),悪性リンパ腫2.3%(1/43),診診紹介36.2%(25/69):肝胆膵68.0%(17/25),泌尿器12.0%(3/25),婦人科12.0%(3/25),悪性リンパ腫8.0%(2/25),病診紹介22.2%(2/9):肝胆膵50.0%(1/2),消化管50.0%(1/2).
【考案】
癌患者の受診契機で診診紹介が32.2%と高く,診診紹介患者の癌発見法では超音波が36.2%を占めた.診診紹介患者から幅広い領域の癌を腹部超音波検査で発見することで診診紹介患者が明らかに増加した.診診紹介患者の増加は,超音波施行医の責任感と学習意欲を高め,超音波検査の質の向上に直結する.診療所での質の高い超音波検査の提供は地域の診診医療連携に好循環をもたらし,結果的に地域医療のレベルアップにつながる.質の高い超音波検査には十分な検査時間の確保と施行者の学習努力と技術向上が不可欠である.検査時間に関しては,診療所では午前中の超音波検査は上部内視鏡とセットで行う場合が多く,時間に追われ消化管や消化器以外の臓器の観察が不十分になりがちで,現在,午後の超音波検査導入を検討中である.