Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 肝腫瘍①

(S803)

ソナゾイド®造影超音波検査を施行した転移性肝血管外皮細胞腫の1例

A Case of Liver Metastasis from Hemangiopericytoma studied by Contrast-enhanced Ultrasonography with Sonazoid®

玉木 恵里子1, 杤尾 人司1, 岩崎 信広1, 香原 美咲1, 簑輪 和士1, 鄭 浩柄2, 杉之下 与志樹2, 猪熊 哲朗2, 今井 幸弘3

Eriko TAMAKI1, Hitoshi TOCHIO1, Nobuhiro IWASAKI1, Misaki KOUHARA1, Kazushi MINOWA1, Hiroshi TEI2, Yoshiki SUGINOSHITA2, Tetsurou INOKUMA2, Yukihiro IMAI3

1神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部, 2神戸市立医療センター中央市民病院消化器内科, 3神戸市立医療センター中央市民病院臨床病理科

1Department of Clinical Laboratory, Kobe City Medical Center General Hospital, 2Department of Internal Medicine, Division of Gastroenterology and Hepatology, Kobe City Medical Center General Hospital, 3Department of Clinical Pathology, Kobe City Medical Center General Hospital

キーワード :

【緒言】
血管外皮細胞腫(hemangiopericytoma)は,血管外皮細胞より発生する腫瘍とされている.下肢や後腹膜に好発するが,肝臓に発生することは稀である.今回我々は髄膜原発の血管外皮細胞腫の切除後に発症した肝転移症例を経験し,造影超音波検査(造影US)を施行したので報告する.
【症例】
40歳代男性
【現病歴】
2008年に他院にて髄膜の血管外皮細胞腫を切除.その後経過観察していた.2015年肝左葉に巨大な腫瘍を認めたため精査した.術前診断は困難であったが,悪性病変が否定できなかったため肝左葉切除を実施した.
【腹部超音波所見】
肝表面は平滑で肝硬変の所見は認めなかった.左葉に境界明瞭で平滑な類円形を呈する約13×7×11cm大の腫瘤像が認められた.内部エコーは,不均一であった.カラードプラ法では腫瘤を取り囲みながら内部に流入する血流シグナルが豊富に認められた.造影USでは動脈相早期に腫瘤は辺縁から濃染され,early venous returnが認められた.後血管相では染影されない領域も観察されたが,全体的には明瞭な染影欠損像は示さなかった(図1).静注12時間後の観察でも高音圧によるFlashエコー法で造影剤の残存が確認された.以上の所見から,肝細胞癌に類似するが典型的な所見とは異なっていた.
【他画像所見】
Dynamic CTでは肝腫瘤に明らかな脂肪成分は認めず,動脈相から平衡相にかけて濃染像を呈した.また左・中肝静脈への早期還流が認められた.EOB- MRIでは腫瘤は早期濃染され,門脈相でも造影効果が持続し,肝細胞相ではdefectを示した.PET-CTでは肝腫瘤に一致してFDG集積を認めた.
【病理組織学的所見】
摘出された肝腫瘤は八頭状を呈し表面には網状の血管走行が目立った.組織学的には腫瘤は短紡錘形の核を持つ異型細胞が錯綜状に密に配列し,毛細血管や膠原線維の介在を伴っていた.鍍銀染色では,細網線維が腫瘍細胞を取り囲むように密に認められた.既往の髄膜腫瘍と類似した組織像であり,血管外皮細胞腫の転移と診断された.
【考察】
肝臓の血管外皮細胞腫の報告は少なく,検索した限り本邦でソナゾイド®造影USを施行した症例は2例のみであった.柴田らの報告では,血管外皮細胞腫は造影USにおいて早期濃染を呈し,後血管相では染影低下を認め,肝細胞癌よりも血管性病変を疑う所見であった.これは我々の症例と同様の所見であった.
【結語】
造影USを施行した稀な血管外皮細胞腫の肝転移の一例を経験した.