Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 肝腫瘍①

(S802)

肝内胆管癌および転移性肝腫瘍との鑑別が困難であった肝細胞癌の1例

A case of hepatocellular carcinoma mimicking cholangiocellular carcinoma or metastatic liver tumor

武田 悠希1, 和久井 紀貴2, 小嶋 啓之1, 吉峰 尚幸1, 植木 紳夫1, 平野 直樹1, 伊藤 謙1, 大場 信之1, 西中川 秀太1, 児島 辰也1

Yuki TAKEDA1, Noritaka WAKUI2, Hiroyuki KOJIMA1, Naoyuki YOSHIMINE1, Nobuo UEKI1, Naoki HIRANO1, Ken ITO1, Nobuyuki OBA1, Shuta NISHINAKAGAWA1, Tatsuya KOJIMA1

1独立行政法人労働者健康福祉機構東京労災病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科

1Department of Internal Gastroenterology and Hepatology, Japan Labour Health and Welfare Organization, Tokyo Rosai Hospital, 2Department of Internal Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【症例】
73歳男性.2009年右大腿骨頸部骨折のため整形外科へ入院した.発熱の精査のため腹部造影CTが施行され,肝S7領域に60mmの腫瘤が認められた.腫瘤は単純撮影で不均一な低吸収域であり,内部の造影に乏しく,辺縁に造影効果を認めた.腹部超音波検査では腫瘤はやや境界不明瞭で不均一な淡い高エコー結節として描出された.腫瘍マーカー(AFP値,CA19-9値,PIVKAII値,CEA値)の上昇は認めず,白血球数,CRP値等の炎症反応の上昇を認めたことから肝膿瘍と診断し抗菌薬で保存的に加療した.その後,炎症所見は改善し膿瘍も縮小したため治療を終了した.初診から3年後の2012年にかかりつけ医で腹部超音波検査が施行され,肝臓に腫瘤を認めたため当院を紹介受診した.腹部造影CTでは前回検査と同部位に40mmの腫瘤が認められた.腫瘤内部は周囲肝と比べて造影効果に乏しく平衡相で低吸収を呈していた.また腫瘤の周辺実質に造影効果が認められた.腫瘍マーカーの上昇は認められず,肝膿瘍の再燃が疑われた.しかしEOB-MRI検査では腫瘤は動脈相で造影され,肝細胞相でlow intensityを呈したため悪性が疑われた.また造影超音波検査では,腫瘤は動脈優位相で染影され,門脈優位相で染影が低下し,後血管相で明確な欠損を呈し,肝内胆管癌や転移性肝腫瘍が疑われた.肝腫瘍生検が考慮されたが,患者本人の希望で経過観察とした.3か月後の画像評価で腫瘤は60mmへ増大し,悪性が強く疑われたため腫瘍生検を施行した.生検結果はAdenocarcinomaであり,肝内胆管癌もしくは転移性肝腫瘍に矛盾しないと考えられた.全身検索を行ったが画像検査で肝転移を来たしうる病変は認められなかった.そのため肝内胆管癌と診断し,肝切除術を施行した.病理学的検査の結果,腫瘍は多結節癒合型の肝細胞癌であった.腫瘍細胞は胆汁を容れた腺管構造が目立ち,肝細胞癌に特異的なZellballen構造が不明瞭であり,組織分類を偽腺管型および索状型と診断した.
【考察】
日本超音波医学会から提唱されている「肝腫瘤の超音波診断基準」によれば,2cmを超える結節型の肝細胞癌は動脈優位相でバスケットパターンを示し,血管増生,不整な流入血管,肝実質に比し強い濃染を呈し,門脈優位相で肝実質に比し低下して染影され,後血管相で欠損もしくは不完全な欠損を呈することが多いとされる.一方で,肝内胆管癌や転移性肝腫瘍の場合では,動脈相で辺縁のリング状濃染を呈し,門脈相で肝実質と比し低下して染影され,後血管相で明瞭な欠損を呈することが多いとされる.また染影されてからの造影剤の消失が肝細胞癌と比し早い場合が多いという報告もある.そのため本症例の造影超音波検査像は肝内胆管癌もしくは転移性肝腫瘍を強く示唆する所見と考えられた.しかし,切除検体の病理組織像は肝細胞癌であった.本症例の造影超音波像が肝細胞癌の典型像とならず,肝内胆管癌もしくは転移性肝腫瘍に類似した原因として,肝細胞癌が偽腺管型を伴った組織形態であったことが考えられた.肝腫瘍に対する造影超音波検査での診断にあたっては典型所見と一致しないことがあり注意を要する.造影超音波像で肝内胆管癌もしくは転移性肝腫瘍を疑う場合には,組織分類が偽腺管型である肝細胞癌も念頭に入れる必要があると考えられた.