Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器⑥

(S793)

大動脈弓部動脈硬化性穿通性潰瘍と非連続性に限局性解離を合併した一例

The case that was complicated with PAU in the aortic arch and localized acute aortic dissociation in the descending aorta discontinuously

伊藤 朝広1, 杉岡 憲一1, 岩田 真一1, 藤田 澄吾子1, 則岡 直樹1, 石川 世良1, 安保 浩二2, 藤岡 一也2, 葭山 稔1

Asahiro ITO1, Kenichi SUGIOKA1, Shinichi IWATA1, Suwako FUJITA1, Naoki NORIOKA1, Sera ISHIKAWA1, Kouji ABO2, Kazuya FUJIOKA2, Minoru YOSHIYAMA1

1大阪市立大学大学院医学研究科循環器内科学, 2大阪市立大学附属病院中央臨床検査部

1Department of Cardiovascular Medicine, Osaka City University Graduate School of Medicine, 2Department of Clinical Examination, Osaka City University Hospital

キーワード :

症例は69歳男性.2015年4月,人間ドッグを受診したところ,単純CTで大動脈弓部外側に突出する大動脈壁の菲薄化を疑う病変が認められたため,2015年5月に精査目的で当院紹介され,入院となった.入院後の造影CTでは,大動脈弓部に外側に突出する9mm×8mm大の動脈硬化性穿通性潰瘍(Penetrating Atherosclerotic Ulcer:PAU)が認められた.経胸壁心エコーでは有意な所見はなく,また,大動脈弓部の詳細な観察は困難であったため,後日経食道心エコー検査を施行したところ,大動脈弓部の同部位に,8mm×7mm大の潰瘍性病変が確認され,その潰瘍性病変周囲には辺縁に石灰化を伴う大動脈プラークを認めた.自覚症状がなく,降圧剤投与にて経過観察となった.退院3週間後,胸背部痛を認めたため外来受診したところ,胸部単純X線で胸部大動脈陰影の拡大,造影CTで新たに胸部下行大動脈に潰瘍性突出像を伴う限局性の大動脈解離を認めたため,緊急入院となった.入院後,胸背部痛などの症状の出現や,病状の悪化は認めなかった.病状安定後に経食道心エコー検査を施行したところ,門歯30cmの胸部下行大動脈にエントリーを有する限局性大動脈解離を認め,その周囲は血栓化を認めたが,カラードプラではエントリー部に流入血流シグナルを認めた.大動脈弓部のPAUと胸部下行大動脈の限局性大動脈解離には病変の連続性は認めず,大動脈弓部のPAUに著変は認めなかった.今後,さらなる大動脈解離の発症や,PAUによる大動脈穿孔の危険性を考慮し,他院でステントグラフト術での加療を行った.
PAUは大動脈の粥状硬化性病巣が潰瘍化して中膜以下にまで達することがあることを指摘され報告されたものであるが,PAUと通常の大動脈解離の関連については様々であり,いまだ不明な点が多い.今回,大動脈弓部のPAUと非連続性に胸部下行大動脈の限局性解離を発症した比較的稀な症例で,限局性の大動脈解離発症前後で経食道心エコー検査にて胸部大動脈の評価を行うことができたため,文献的考察を加え報告する.