Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器③

(S783)

長期生存を得た左室原発内膜肉腫の一例

Primary cardiac intimal sarcoma with long term survival

新保 麻衣, 細谷 知樹, 佐藤 和奏, 渡部 久美子, 飯野 貴子, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Mai SHIMBO, Tomoki HOSOYA, Wakana SATO, Kumiko WATANABE, Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
40代女性
【現病歴】
労作時呼吸困難を主訴に前医受診.胸部レントゲン上心拡大と肺うっ血を認めた.さらに心臓超音波検査(UCG)で大動脈弁〜僧房弁前尖〜左室にかけて腫瘤が指摘され,当科紹介となった.
【経過】
胸部聴診では,胸骨右縁第2肋間に収縮期駆出性雑音,心尖部に収縮期逆流性雑音を聴取しており,血液検査上BNP 388 pg/mLと上昇していた.当科入院時のUCGでは,前乳頭筋を含む左室側壁を中心とし,大動脈弁,僧房弁に進展する約70×30 mmの腫瘤を認めた.大動脈弁は高度の逆流に加え,右冠尖,左冠尖が肥厚し可動性が低下しており,大動脈弁最大通過血流速度4.0 m/s(max PG 66 mmHg)と高度狭窄が確認された.僧房弁外側に進展した腫瘤のため,僧房弁は狭窄(mean PG 12 mmHg)と高度逆流を呈していた.三尖弁には腫瘤進展はなかったが,TRPG 46 mmHgと左心不全による肺高血圧を呈していた.PET-CTでは左室に加え,仙骨,大腿骨に高集積を認めた.左室の広範囲の腫瘤進展と骨病変合併のため根治手術の適応はなかったが,心不全の増悪傾向が強く,延命のため準緊急で左室腫瘤摘出術と二弁置換術を施行.腫瘤の完全切除は不可能であったが,合併症なく終了し血行動態の改善を得た.摘出標本は病理学的に心臓原発内膜肉腫と診断され,ゲムシタビン,ドタキセルによる化学療法,骨病変に対し放射線療法を選択し,心不全症状なくADLを保ちながら約19か月間の長期生存を得ることができた.
【考察】
内膜肉腫は肺動脈,大動脈より発生することが多いとされ,心臓原発は非常に稀でこれまでに数例の報告しかない.さらに,本症例のように集学的治療により長期生存を得た例も非常に少なく,文献的考察を含めて報告する.